蝉論争

 秋頃、家の近くにはやたらと蝉の亡骸が転がっている。よく目を凝らしてみると、脚の開いたものがある。つま先で突くと短い悲鳴をあげ、いそいそと飛び立って行く。巷ではこの現象を『蝉ファイナル』と呼ぶそうな。

 死に際の蝉にも意地があるのだろう。ぽてりと地面に落ちるその時まで鳴き続ける個体もいる。鳥に見つかろうがお構い無し。子孫を未来へ託す、雌が来るまで鳴き続ける、という単純なプログラムだけを遂行することに意味はあるのか。そんな事を考え今年も旬のさつま芋を買いに八百屋へ向かう。そうだ、今日の夕飯はさつま芋入りの炊き込みご飯にしよう。木にぶら下がる蝉の抜け殻を横目に、私は自転車に跨った。

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