第2話 劣等生と天才先輩(1)
星導魔法学園の校門は、まるで神殿のようだった。
白銀の石造りに浮かび上がる魔法陣、その中心には星を象った紋章。
ユウリ・クレインは、その門を見上げて溜息をついた。
「……やっぱり、場違いだよな、俺」
初日の朝、校門前で立ち止まりながら、彼は周囲を見渡す。
煌びやかな制服を着た新入生たちが、楽しげに笑いながら通り過ぎていく。
皆、きっと魔法の才能に恵まれた者たちばかりなのだろう。
対するユウリは――魔力ゼロ。魔法適性もなし。
唯一の武器は、記憶力と観察眼のみ。
「ま、今さら引き返すわけにもいかないしな」
気を取り直し、入学式の行われる講堂へと向かう。
だがその途中、運命のいたずらのように――彼は“事件”に巻き込まれた。
講堂の裏手にある庭園の前を通りかかったときだった。
人だかりができており、何やら騒がしい。
「見た? あれ、完全に暴走してるよ」
「危ないって、誰か止めろよ!」
好奇心から近づくと、そこには一人の少年がいた。
制服の袖を焦がしながら、暴走する魔法を止められずに苦しんでいた。
足元に展開された魔法陣は、どう見ても未完成。エネルギーが暴れ、制御不能になっている。
(まずい、あのままじゃ爆発する……!)
周囲の生徒たちは距離を取って見ているだけ。教師もまだ来ていない。
誰も助けに入ろうとしない中、ユウリはとっさに駆け出した。
「おい! 魔力の流れ、逆になってる! 刻印を左に回せ!」
「えっ、えっ……?」
「落ち着け! そのままじゃ魔法陣が壊れる! 俺が外周を踏むから、お前は中心を……!」
経験でも知識でもなく、過去に読んだ魔法理論の記述と、自身の直感を信じて動く。
そして――
「今だッ!」
ユウリが声を張り上げた瞬間、少年が指示通り動いた。
次の瞬間、暴れていた魔力が収束し、静寂が訪れる。
「……や、やった……?」
周囲から歓声と拍手が上がった。
「おい、すげぇ! なんで魔法使えないのにあんな判断が――」
「誰だあいつ……」
そのときだった。
背後から、ひときわ落ち着いた、澄んだ声が響いた。
「冷静で的確な判断だったわね。……まさか、あなたが“ユウリ・クレイン”?」
振り返ると、そこにいたのは――銀の髪に水晶の瞳を持つ少女。
星導魔法学園の上級生であり、“星導の才女”と称されるセリア・アルフォードだった。
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