ロシアンハーフの幼馴染みを、今日も全力で口説きます。
雪椿.ユツキ
序章 新学期の始まり
第1話 国宝級の美少女幼馴染み
爽やかなそよ風に吹かれながら、桜の花びらで彩られた通学路を歩いて進む。
黒色の制服に青色のネクタイを身に付け、茶色のスクールバックを右手に持つ。
通学路を進んだその先には、満開の桜の木でいっぱいなとある学校、
4月になって初めての登校日。いわゆる、新学期。
今日から晴れて高校3年生へと進級した俺の名前は、「
この高校生活も、とうとう最後の1年。
早かったような短かったような...そんな曖昧な気持ちが胸に湧き上がってくる。
入学した当初は、ここから新たな3年間が始まるのだと、新鮮な気持ちと共に3年と長く感じていたはずなのに、いざ3年生になると今まで過ごした時間が一瞬で過ぎ去ったような感じがする。
本当に不思議なものだ。
そんな事を思いながらも、俺は藤乃宮高等学校の正門へと歩き進める。
☆☆☆
正門を通り抜けると、すぐ目の前には数え切れないほどの生徒達が集まっていた。
皆、下駄箱前に貼られたクラス分けの貼り紙に夢中になっているみたいだ。
まぁ、新学期早々の登校日と言えば当然の光景だ。
だが、あまりにも生徒が多く貼り紙に近寄る事が難しい。
ここからだと距離がある上、貼り紙に書かれている文字もそこまで大きくないから、いくら目を細めて見ても全く見えない。
「はぁ。少し待つしかねーかねぇ」
俺は短くため息を吐く。
ただボーッと人が減るのを待っていては退屈で仕方ないから、俺はズボンのポケットからスマホを取り出すと、電源を入れながら近くの桜の木の下に設置されたベンチへと向かう。
よいしょっとベンチに腰を下ろして、スクールバックを横に置き、バックの上に左腕を乗せて楽な姿勢をとる。
右手でスマホを操作し、適当にSNSを眺める。
現在の時刻は7時20分。
8時までにはクラスへ向かい着席してなければならない。
まぁ、まだ時間にはかなり余裕があるし、人もすぐには減らなさそうだから、しばらくここでのんびりしていようじゃないか。
そうして俺は、ただひたすらスマホとにらめっこするのだった。
☆☆☆
あれから10分後。
まだまだ登校してくる生徒は居るものの、少しずつ人混みも少なくなりだしていた。
朝礼が始まるまであと30分。そろそろクラス分けを見に行こうか。
スマホをスリープ状態にして再びポケットへとしまうと、スクールバックを持ってベンチから立ち上がる。
立ち上がったその時だった。
正門側からザワザワと色んな声が飛び交わし出す。
「......丁度来たか」
俺はそうボソッと呟くと、正門側へと視線へ向けた。
視線を向けたその先には、たくさんの生徒達から見つめられ、そよ風に吹かれながら登校してくるある1人の女子生徒。
太陽に照され眩しく輝く純白の長い髪、ダイヤモンドをそのまま埋め込んだのではないかと思ってしまうほどに美しい水色の瞳。
道行く生徒達ににっこりとした笑顔で挨拶をしながら歩いて来る純白の美少女。
「......あっ! 滝斗の先輩! おはようございますですっ!!」
純白の美少女は、俺の顔を見るとさらに眩しい笑顔を見せながら、駆け足で俺の近くまでやって来る。
「おう、おはよう。シェイラ」
俺はニコッと微笑む彼女にそう言う。
シェイラと呼んだ純白の美少女は、物心がつく前からの幼馴染みだ。
「二ノ宮シェイラ」これがシェイラのフルネーム。
母親がロシア人で、父親が日本人のロシアンハーフであるシェイラは、その美しい容姿と透き通った綺麗な声に、学校内では「
そんな純白の姫君は、この俺の幼馴染み!
そう、この学校内で最もシェイラと関係が深い存在なのだ!
全生徒が喉から手が出るほど欲しいこの関係を持っていると言う事実を、俺は誇りに思う。
「滝斗の先輩、ここで何してるですか? 滝斗の先輩は、新しいクラス分けを見に行かないですか?」
誇りげに胸を張っている俺を上目遣いで見つめながらそう問いかけてくるシェイラ。
「あぁ、ちょうど人が少なくなってきたから、今から見に行こうとしてたとこさ」
「そうなのですね! なら、一緒に見に行きましょうです! 滝斗の先輩!」
またもや眩しい笑顔を見せるシェイラに、今日もたくさんの生徒達は胸を撃たれる。
「てかシェイラ、今年も先輩呼びすんの?」
俺はシェイラにふとそう問いかける。
俺とシェイラは同級生かつ、年齢も同じ18歳だ。
なのに、シェイラは中学生の頃からずっと俺の事を「滝斗の先輩」と呼んでくるのだ。
学校内だけじゃない。プライベートの時でもそう。
きっかけは、中学生の頃にシェイラがハマって読んでいたラブコメ漫画に登場するヒロインが、主人公の事を先輩と言う後輩だった事だ。
先輩呼びが可愛いと感じてしまったシェイラは、それ以降ずっと俺を先輩呼びするようになったのだ。
ちなみに、そのヒロインは必ず語尾、もしくは話の最後辺りで「です」をつける癖があり、シェイラもその口調をずっと真似して馴染んでしまっている。
「もうこの呼び方で完全に染み付いちゃっているですから、今更やめる事なんて出来ないですよ!」
シェイラは明るい声でそう言う。
まぁ、正直ロシアンハーフ美少女に先輩と呼ばれて嫌な気持ちになるはずがない!
「そうか。そりゃ良かった。よし、クラス分けを見に行くぞシェイラ!」
「はい! がってん承知です!」
俺はシェイラと肩を並べながら、クラス分けの貼り紙を見に歩き始める。
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