第2話 衣替え
「「いってきまーす」」
朝食後、身支度を整えて拓海と百合は自宅を発つ。
「今日から夏服かぁ~。久々に袖を通したね!」
「…僕はまだ、冬服の方が良かったけどね」
「そうなの?何で?」
「それは…」
拓海の視線は、百合の着るブラウスに向く。
正確には、ブラウスの胸元に。
「あ~!今あたしの胸見たでしょ?」
「しょ、しょうがないじゃんか!薄着の百合姉は、め…目立つから」
「ふーん、やっぱり拓っくんも男の子なんだ~」
「てかさ…なんで締めないの?」
「締めないじゃなくて、締まんないの!」
おもむろに、百合は自身の胸を持ち上げる。
「この間、下着屋さんで計ってもらったら、また大きくなってたの!お気に入りだったブラが入んなくなっちゃたのよ~」
「そ、そんな事あるの?」
「あるわよ!拓っくんの身長がどんどん伸びるのと同じでね」
「そ、そう言う物なの?」
「そうよ。ちなみに、今いくつあると思う?」
「し、知らないよそんな事…」
「な・ん・と…去年まで2桁だったのが、3桁になってたの!」
―つまり、100って事…?―
言われてもいまいちピンと来ず、拓海にはただ大きいという情報しか伝わらなかった。
「だから毎日大変なの、重くて肩が凝っちゃうし、ダイエットしても胸は小さくならないし…」
「ダイエットって、百合姉は十分痩せてるじゃん」
「胸以外はね!良い、大事なのはバランスなの!胸だけ大きくても似合う服が無くなっちゃうの!」
「そ、そういう物なんだ…」
「拓っくんも女の子になれば分かるよ。胸の事や生理の事とか、女の子の大変なことがね」
「うーん、百合姉からたくさん聞かされてるから、大変なのは分かってるつもりだけど」
「百聞は一見に如かずって事!あーあ、1日だけ拓っくんと体を交換出来たら、楽しいだろうなぁ」
「…僕が百合姉の体使って、いたずらするとか考えないの?」
キョトンという顔をする百合。
「ううん!拓っくんは優しいから、あたしの嫌がる事はしないと思う!」
「…そっか」
屈託のない笑顔で言う百合に、どこか救われた気持ちになる拓海であった。
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