第二章 スワップ無限増殖? 天才トレーダーの手札
夜、リリアの家で休んでいた俺は、急に文字が脳内に浮かぶ感覚に襲われた。
【固有スキル:スワップ無限増殖】
……どう見ても、FX用語そのままだ。前世でお世話になったスワップポイント(通貨の金利差益)の概念に近いものだろうか?
説明を見ると、要約すると「自分が寝ている間も、所持金やスキルポイントが少しずつ増える」という不思議な能力らしい。
「なにこれ……ほんとにチートじゃん」
あまりにもド直球で“金増殖”系スキル。こんなのあったら苦労しないでしょうが!とツッコミたくなるが、事実として授かってしまったのだから仕方がない。
もっとも、寝ているだけで即100万ゴールド!……みたいな甘い話ではなさそうだ。増える率は微々たるものだし、資金がゼロなら増えようがない。結局はある程度の種銭を用意してこそ本領を発揮する感じだ。
とはいえ、これだけでかなり優位に立てるのは間違いない。いつか大きな資金を回すとき、ギュイーンと増える可能性があるわけだ。
「いいね。モルガン程度なら瞬殺してやれそうな気がする」
……ただ、そう上手く行くかはこの世界独自の相場感次第。調べるしかないな。
翌朝、リリアは「まだ身体が完全じゃないんだから、休んだほうが……」と心配顔。
でも俺は「問題ナッシング!」と笑顔で隣町まで行く馬車に乗り込む。どうやらそこには小さな市場があって、スキルの売買をする露店が多いらしい。
着いてみると、露天商がずらりと並び、「剣術Lv1」「応急治療Lv1」「炎魔法Lv1」などのスキル結晶が値札つきで置かれていた。
「おお……本当に才能そのものが売られている!」
十数ゴールドから数十ゴールド程度のものが多く、一部人気スキルは100ゴールドを超えることもあるらしい。
俺は前世の相場分析モードを発動。出品状況や値動きを見比べて、「これが上がる、あれが下がる」など勝手に予想してみる。すると、徐々に現実の市場の動きが頭の中で組み立てられていく感触がある。
試しに「森林採集Lv1」を数ゴールドで買ってみた。今後、炭焼き系の需要が増せば木材関連のスキル需要も連動して上がる……そう睨んだのだ。
実際、しばらく待ってみると、炭焼き職人系のスキルが徐々に人気化し、その影響で「森林採集」への関心も高まりはじめた。そこでサクッと売りに出したら、少ないながらも利益が出た。
「やっぱり相場は楽しい!」
数ゴールドが10ゴールドに化けただけでも、村人たちにとっては大きな金額だ。この調子でやっていけば、モルガンを追い払う手だてが作れそう……!
エル・グラン村に戻ったとき、入り口からしてピリピリとした空気。馬車を降りるや否や、リリアが慌てて駆け寄ってきた。
「ゼ、ゼロさん、大変……モルガンが来てて、取り立てが……!」
そこには太鼓腹の男――悪徳商人モルガンが、手下を引き連れて村長を恫喝する光景が。
「返済しろだと? 無理? 知らんわ! じゃあ娘を売るしかねえな!」
おいおい、絵に描いたような極悪人だな。
「てめえら、なにジロジロ見てやがる? こいつらに払う意志がねえなら、遠慮なく全部頂いていくまでだぜ」
村長は土下座して必死に嘆願するが、モルガンは鼻で笑う。手下がリリアを捕まえようと近づく。
……はぁ、なんか面倒くさいけど、こういう時はシュバッと助けに入るのが男ってもんだろ。
俺はスッと前へ出た。
「お前がモルガンか。そこまで言うなら、ちゃんと金で決着つけようぜ。俺と勝負しろ」
モルガンは胡散臭そうに俺を見つめ、鼻を鳴らす。
「なんだガキ。借金肩代わりでもしてくれるってか? いや、そもそもそんな大金あんのかよ? え?」
「あるかどうかは勝負してみりゃわかるだろ。手下で暴力振るって終わり、なんてダサい真似はやめてくれよ。商人だろ?」
周囲の村人がひそひそと騒ぎ始める。「こんな若造が対抗できるわけがない」「でもゼロさんはなんかスゴイらしいぞ……」といった声が飛ぶ。
モルガンは自尊心をくすぐられたのか、不敵な笑みを浮かべ、「いいだろう。お前を徹底的に叩きのめしてから奴隷にするのも悪くない」と承諾した。
……ああ、奴隷にするのは俺でもいいから、リリアには手を出すなって話。ま、すぐさまリリアを救えるなら、ここで俺が表舞台に出るしかない。
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