手紙

セキチク

第1話

 ――十八歳のときの話だ。


 ものづくりが趣味な高杉たかすぎ清彦きよひこ――通称キヨと、商売上手なオレ、千田ちだ音羽おとは――通称ちだっちは仲が良かった。


「ちだっち、僕らでお店開こうよ」

 言い出しっぺはキヨだった。

「ああ、開こうな」

 絶対キヨとなら成功できると信じていたし、逆にキヨとじゃないと成功できないような気もしていた。

「ちだっちって商売上手だしなぁ……」

「商売上手でもものがねえと売れねえし。キヨがいねえとなんにもできねえよ」

「またまたー。ちだっちも手先が器用なんだから、作ろうと思えば作れるでしょ」

「キヨみたいな手の凝ったものはつくれねえの」

 キヨがよく作るのは工芸品で、オルゴールとか仕掛け箱だけでなく、お皿やコップなどもよく作っていた。

 キヨの作る作品が、オレは好きだった。

 二人で店を開く。

 小さな、それでも夢であったものは、当たり前に叶うと思っていた。だけどそれは叶わなかった。


 ――ある一通の手紙を残して。

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