服を着よう、街へ出よう

「これで、お出かけできますね!」

レイネは満面の笑みだ。

「そ、そうね」

杏が戸惑いながらも頷く。


「やったー」

レイネは両手をあげて喜ぶ。

 その瞬間、彼女の肩から掛けていた白いガウンが、つるりと滑り落ちた。


「ちょ、ちょっと!?服を着てえぇぇぇ!!」

杏が思わず叫ぶ。

レイネは全裸だった。というか、芸術だった。

リアル峰不二子みたいなシルエットに、エルフ耳。


「どうして?女性同士なんだから、いいじゃないですか」

ころころ変わる表情は疑問に満ち溢れていた。

「良くない!ルールなの!文化的にも倫理的にも道徳的にも!!」

「えっ、文化……?」レイネはきょとんとする。


杏が慌ててガウンを掛け直す。

「服って言っても、昨日着てたあの服しかないの?」

レイネが昨日着ていたのは、どう見ても“白魔導士の装束ホワイト・ローブ”。

これで街に出たら、立派なコスプレイヤーである。

それに、中は皮鎧レザーアーマーが仕込まれていて、部屋着にも向いていない。

「そうですね。準備してきていないです」


「えーと……服、服、何か着せられる服──」

杏は、自分のクローゼットを見回した。

サイズ的に、杏の服はすべてアウトだ。何しろ、胸のボリュームが次元違い。

杏のMサイズは、レイネのフロントマウンテンには非対応である。


「うーん……あ、そうだ!」

タケシが持っていき忘れたワイシャツがあったはずだ。彼の残り香がするのは嫌だけど、今は背に腹は代えられない。

「これ、とりあえず着てみて」

杏はワイシャツを手渡す。


レイネは素直に袖を通すと、ぶかぶかの袖口からちょこんと指を出して振り返る。

「ちょっと大きいですけど……いい感じですね!」


──モエ袖。

──彼シャツ一枚。

──しかもノーブラ。

どこかのYoutuberかよ…


「これでお出かけできますね!」

まだ、世の中に慣れていないのは明白だった。

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