ウソつきはカモの始まり ー 転校生と生徒会長の学園ミステリ
あると
第一話 ウソつきはカモの始まり
ウソをついた者は、必ず損をする。天羽学園では、そんなジンクスがまことしやかに囁かれていた。
「生徒会長、またです! 昼休みの購買前で、"当たりつきパン"を使った詐欺事件が発生しました!」
生徒会室に飛び込んできたのは、会計担当の
「詳細を」
「購買の菓子パンには、時々"当たり券"が入ってるじゃないですか。その券を持って行くと、無料で好きなパンがもらえるんです。でも今回は、生徒たちが"大当たり券"と書かれた紙を誰かに売りつけられたらしくて……当然、そんなものは偽物でした」
私はため息をついた。学園内で詐欺まがいの行為が横行するなんて、許せるはずがない。
「犯人の目星は?」
「それが、証言がバラバラで、どの情報もアテにならなくて……」
「ウソつきが多いってこと?」
突然、後ろから軽い声が割り込んだ。振り向くと、そこには今朝転校してきたばかりの橘
「ちょっと! ここは生徒会の関係者以外立ち入り禁止なんだけど!」
「ごめんごめん、たまたま通りがかったら面白そうな話が聞こえたもんで」
彼はニヤリと笑う。軽薄な態度に見えるが、その目はどこか鋭い。
「で、生徒会長さん。こういう時は"嘘つき"を見抜けばいいんでしょ?」
「簡単に言わないで。嘘を暴くのは容易じゃないわ」
「そうかな? 嘘をつくやつは、絶対に"あるパターン"を持ってるんだよ」
悠真はそう言って、黒板にさっと文字を書いた。
① 話す時に妙に細かく説明する
② 聞いてもいないことを言い出す
③ 同じ話をするたびに微妙に内容が違う
「これ、ウソつきの特徴。さあ、さっそく試してみようぜ」
数時間後、購買前。
「えっ、どうして……」
詐欺事件の首謀者として捕まったのは、まさかの生徒会副会長だった。彼は最初、しらを切っていたが、悠真の仕掛けた"誘導尋問"に引っかかり、ついにボロを出したのだ。
「バカな……! 俺がウソをついてたって、どうやって見破ったんだ?」
「アンタの証言、最初に話した内容と、さっきの話で微妙にズレてたんだよ」
悠真が笑う。
「それに、人は本当のことを話す時よりも、嘘をつく時の方が細かいディテールを足しがちだからね。アンタ、まさにそのパターンだった」
私は改めて、悠真を見た。
彼はただの軽薄な転校生じゃない。人を観察し、嘘を見抜く力を持っている。
(この人、もしかして、生徒会にとって強力な武器になるかもしれない)
「橘 悠真、今後も協力してもらうわ」
「えっ、生徒会にスカウト? まあ、悪くないかもね」
こうして、嘘つきの転校生と、生徒会長の奇妙なコンビが誕生した。
だが、この時はまだ知らなかった。悠真自身が、誰よりも"ある秘密"を隠していることを――。
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