光の部屋、影の部屋
あっぴー
第1話 月影流架ってどんな人?
私は
美空高校三年一組、折り目正しい風紀委員長。
もちろん成績も優秀で、いつも学年一位。
気になるのは、いつも二位、数学では一位の、二組の
どんな人なんだろう?
男子か女子かもわからないけどロマンチックな名前…きっと知的で素敵な人なんだろうなあ…
帰り道、ゲームセンターの裏で、どこかやさぐれた雰囲気でアンニュイにタバコをプカーっとふかしている、うちの制服の生徒を見つけた。
髪の毛も茶髪で外ハネパーマで
…これは注意しなきゃ!
「ちょっとあなた! 色々校則違反よ!」
「けっ、出たよ、うちの御奉行様」
「な、なんでそのあだ名知って…」
「だってあんた、いつも誰かに注意して、また御奉行様がーって疎ましがられてんじゃん。
大体さあ、成績二位だぜ俺、これぐらい許されていいだろ」
「なによ! そんなら私は一位だけどそんなことしてないわよ!
…えっ、二位?
ということは…
月影流架?!」
「そうだよ」
「うわあああ、夢が崩れるー。
その見た目で二位なんてー」
「なんだよ、失礼だな!
よく見てよ、俺って結構かっこよくない?」
「不真面目そうな時点でかっこよく無いっ!」
「頭、かったぁ…
こちとら、家に帰れば、塾も家庭教師も用意しない母ちゃんに、勉強しろ、勉強しろって追い立てられるんだぞ。
派手なカッコしてタバコ吸うぐらいの息抜き、許せよな」
「私だって独学です! そんな息抜きなど不要です!」
「ま、マジか。すげえな。
強いのかな、勉強の才能あるのかな。
じゃあさ…
俺に勉強教えてくれない?
国語系は苦手なんだよね。
数学は俺の方ができるから教えるし。
そしたらタバコはやめてやるよ」
「えっ」
「どうせあんた正義感強すぎて友達いなくて、家に真っ直ぐ帰って勉強、勉強だろ、そうじゃなけりゃ独学であんな成績な訳がねえ」
「うっ…」
「俺も同じ。友達いない。
小遣い少ないから、誰かに遊びに誘われても、娯楽施設って最終的に追加料金でいくらになるかわからなくてハラハラする」
「でもタバコや派手な服は買うんだ」
「値段決まってるから落ち着くしな。
服はかーちゃんが買ってくるやつがほんっとーにダサくてさ。
水玉とか、やたらカラフルな星柄とか、よくわからんおにぎりのキャラとか、高校生男子が着るかっての」
「いつまでも可愛い子供のつもりなんだね。
側から見たらぜんっぜんかわいくないのに」
「あんたもなかなか言うなあ!
あと、タバコは今日のは拾い物だから心配無用」
「えっ!」
「ん、まあ、そら引くか。
ごめん、余計なこと言ったわ、やっぱ汚らしい感じするよね」
「そりゃそうだよ!
口につける物を拾い物って、ほら、今コロナとかもあるし衛生上心配じゃん!」
「へえ…俺を蔑むんじゃなくて、健康を心配してくれるんだ。
ほんとにさ、本気でこんな奴の相手してくれるの、あんたぐらいだろうね」
そっか…
淋しいんだ。
「そうね…
たしかにどうせ勉強するなら、一人悪の道から救いながらの方が気分いいね」
「じゃあ今からうち来る?」
「えっ、うちじゃないの?」
「あー、そっちの親も、帰りが遅いとどこ行ったの! ってうるせえ奴か…
じゃあ交互でいっか」
「で、でもその、男子の部屋に上がるのは」
「大丈夫、うち母ちゃん専業主婦で、1時間おきぐらいで差し入れと銘打ってノックもせずに入ってくるから」
「えっ、そんならパートでもして塾か家庭教師でいいんじゃないの?」
「俺的にもその方がマシなんだけど、今は独立した兄貴が塾代着服して遊び歩いたせいで、塾は無し!
家庭教師もつけたけど、金を出してるからって母ちゃんが色々小うるさく言って揉めて、それも無くなった!」
うわあ…
いるよね、上の子がやらかしたからって、下の子にやらかす前から同じこと禁止する親…
「ごめん、そりゃ息抜きが必要だよね…
私の方が強いとか地頭がいいだなんてとんでもない、その家庭環境で学年二位まで登り詰めるなんて、私きっと無理だよ…」
いかに自分が恵まれているか思い知る。
「まあでも、金も取らない同級生相手には、そううるさくも言わんでしょ。
じゃ、今から朝光んち行っていい?
俺の部屋汚いし」
ちょ、いきなりうち?
でも、この人の部屋、ほんとに汚い気がするし…
「…わかった」
「助かりーっ。
今日うちのクラス、古文の宿題出ててさ。
教科書の数ページ分の品詞分解、毎回やんのめんどいよな」
「だったらうちに行く前にコンビニ寄って、教科書コピーしないとね」
「えっ、それって怒られねえの?
俺、毎回教科書の文章、ノートに手書きで丸写しして、古文だけで1時間かかってたわ」
「ええ…すごい根性…」
「マジでいいのかあ」
ほんとにこの人、友達いないんだなあ…
その上、あんまり周りも見ないタイプ?
なのにクラスが違う私が御奉行様って呼ばれてるのは知られてるって…
どんだけ悪目立ちしてるんだろう。
なんだか恥ずかしい。
ウイーン
「さてと、コピー代、後で請求してやろ。
母ちゃんは勉強の効率化と聞けば金出すからな。
タバコ代が浮くなぁー、何に使おうかなあ」
「た、楽しそうでよかったよ…」
「あっ、まずはファブリーズ買うわ」
「あー、タバコ臭。
気を遣ってくれてありがとう、でもまあ、うちにもあるから玄関でやれば…」
「えっ、朝光んちの使っていいの?
…そうだ、家に電話しなきゃ」
プルルルルルル
「もしもし? 今日は友達んちで勉強してくるから遅くなる、夕飯までには帰る」
『そんなこと言って、また適当に女の子拾ってどっかほっつき歩いてるんでしょ!
だって、あんたに友達なんていないじゃない!』
「いや、今日友達できたんだよ。
たしかに女の子だけど、見れば友達だってわかるからさ。
…テレビ電話にしていい?」
「…いいけど」
『あらまあ! たしかに流架が遊ぶような娘じゃないわね!
ほんとに友達のようね、ごめんなさいねえ』
ガチャッ
「…友達がいないって決めつけがひどいね。
うちの親ならあんな言い方はしないのに。
そりゃ、たまには女の子と遊びたくもなるよね…」
「わかってくれるんだ」
「でも、ふーん…
友達はいないのに女の子とブラブラして、しかも私じゃその相手に見えないんだぁ…」
「…あっ、ああ!
いやごめん、そういうことじゃない!
俺の女版みたいな娘と歩いてるのを母ちゃんに何度か見られててさ!
タイプが違うってだけで、別に朝光がダサいとかそういうことではない!」
「それもそうね…」
でも、モヤモヤが完全には晴れない…
おかしいなあ…
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