渦中

@yayoi_yui

第1話

 意外と人生は思い描いた方へと進んでいくものです。こうなりたいという意思には、あなたが思うよりも大きな力が備わっていることでしょう。時に理想を追いかける姿は醜く見えることもあります。僕もそう思い、過去には封印することを選びました。でも、それは違ったのです。理想のために声を出し続ける人間が、どうして汚く見えましょうか。纏めると、意思をもつことが重要なのです。

 今日日人間というものは刺激を求める特性があります。それが社会から離れ、責任をそこまで負う必要がない場所であればその特徴が顕著に表れます。少し声を出してみましょう。告白でも、浮気の誘いでも、暴言でも、なんでも構いません。すると、どうでしょう。意外と面白がってくれる人が現れることに気が付いたのではないでしょうか。これが人間の本質であり、揺るぐことのない根幹なのです。



 最後に、環境を見定める力をぜひ身に着けてみてください。仲間内のノリ、とでもいえばわかりやすいでしょうか。今の居場所でウケなかった、スベった話がほかの場所では圧倒的にウケる可能性も大いにあります。でも、何度も失敗し続けると手遅れになってしまいます。その話がウケるかどうか、即座に判断できるような脳内の定規にメモリを振ってみてください。そして、どうか自分にユーモアが無いと思わず、尖った部分を曝け出してみてください。案外女性も笑ってくれるかもしれませんよ。



争う必要なんてない。


本当は、綺麗に生きていくことだってできた。だが、戦うことを選んだ。


正面を切る必要なんてない。


姑息に、卑怯に。


自分のやり方で戦っていく。もしかしたら、僕がどこまで通用するのか確かめてみたくなったのかもしれない。


運も良かった。これまでの不運を食いつぶし、最高のタイミングを掴んでいた。


土壌も整えた。完璧なまでに整えられたステージでは、吹けば飛ぶような狭い界隈でも段違いの拡散力を発揮した。こんなにも、やってきたことは正しいのだと、証明してくれるものはなかった。


良く良く考えてみれば、当然の結果だったのかもしれない。俯瞰を捨てたのも戦略だが、ここまで上手くハマるものかと感心でため息が出る。


信じられないほどに心地が良い。承認欲求が満たされる瞬間というのは、こんなにも良いものなのだと初めて真に実感できた。


最高潮を迎える僕。最低を歩く君。


僕は嘘をつくのがめっぽう上手になってしまったようだ。


嘘をつくため、アリバイを張り巡らせ。

嘘をつくため、自分の心の機微を掌握し。

嘘をつくため、行動を正当化できるだけの人格者であることをアピールする。


正直、もう死角がない。これが僕の思い過ごしではないことを期待している。


あとは、大匙いっぱいのトーク力、もといユーモア。


これだけの物を揃える。そのための鍛錬を何度も繰り返してきた。そして、今、僕の手には力がある。


始めて、希望の光が見えた。


どこに行ったとしても通用するような力もバックグラウンドもある。


そして、ステージはそれを証明してくれた。


途中で『かかる』こともないだろう。そのために幾度となく散々辛酸を舐めてきた。痛い目を見ないと気づけないことも、試してみたくて仕方が無くなるあった。だが、どんな最低な経験だって、後の痛みを軽減するのには役に立つ。それに、悪魔の誘いをきちんと断れるようになっていった。


これまでは辛かった出来事を、これも経験だ、と割り切ることが完全にはできなかった。どんなに人生はまだまだ長いと言われても、その言葉の真の意味を理解することはできなかった。


だが、今ならば言える。


これからなのだ、今、ようやく全てが始まったのだ。


他人事のようにも思えるが、本当に自分は良くやったと思う。


なんせ、土壌が完璧なのだ。


何をしたって許される。この状況では、あまりにも自分が強すぎる。


なりたい自分、求められている自分もこれまでにない完成度で実現、再現できる。


さて、幸せになろうじゃないか。

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