第6話:残像

あの日から、もう三ヶ月が経った。

 季節は春から夏へ。

 蝉の声が、喧しく響く。


 湊は生きていた。

 体はまだ不自由だったが、なんとか杖をついて歩けるまでに回復していた。

 職場には戻れず、静かな街に移り住み、ひとりで暮らしている。


 だが——何かがおかしい。


 窓辺に立つたびに、誰かの視線を感じる。

 夜中に目を覚ますと、窓ガラスに自分ではない“笑顔”が映る。

 駅のホームでふと目が合った女性が、泣きながらこう言った。


 「あなたを見た瞬間、死にたくなくなったの……」


 意味がわからなかった。

 だが、湊は気づいていた。

 自分が“誰かに見られる存在”になっている。

 あの日、アオがいた場所に——

 今、自分が立っている。

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