閑話 笹宮まどかの初恋~その8~

 聡二君と仲直り出来て良かったです。


 ううん。

 仲直り,じゃない。


 もっと仲良くなれました。


 あの後,マスターと陽子さんから聞いた話は,あまりにも衝撃的すぎて,ちょっと今の私の頭では整理しきれません。

 彼の辛い過去を知っただけでも気持ちが追いつきません。

 だから,いつか彼に話せればと思います。

 マスターは絶対に秘密だと仰られましたが。

 でも,それは悲しいことだと,私は思います。


 一つ朗報は,マスターと,彼の思い出の喫茶店のマスターは実は幼馴染みで,今でも連絡を取り合ってるということです。

 思い出の喫茶店のマスター,お名前は間宮向陽さんと伺いました。

 亜美さんのお兄さんです。

 その方も,ずっと聡二君を心配されてるとのことです。

 いつか,全てが終わったら。

 いつ終わるのか,何をもって終わりというのか分かりませんが。

 聡二君と二人で,そのお店のカフェオレが飲みたいです。




 そう言えば,なんで私に話してくれたのかマスターに聞いたところ。

『二人はお互い思いやっていて,深く愛し合ってると思ったから』

 と,仰られました。

『でも,私は聡二君とまだお付き合いしてませんよ?』

 そう言ったら,マスターは床をのたうち回られ,陽子さんはお腹を抱えて爆笑されていました。


 でも,『まだ』です。

 正直,聡二君が私のことをどう思ってるのか分かりません。

 端で見ていて,そう思えるのなら大丈夫と信じたいです。


 私は。

 聡二君のことが大好きです。

 だからその夜,両親に自分の考えをはっきり言いました。

 あれから父とは口をきいていません。

 母はオロオロするばかりです。


 でも,マスターが予見されているように,これから聡二君はもっと辛い困難に立ち向かわなければならないんでしょう。

 私の家の問題など,それに比べたら些細なものです。


 だから。

 胸を張って彼に伝えたいです。


 あなたが好きです。


 これが私の『初恋』の物語。

 ううん。

 『初恋』の始まりの物語。


 これからは私の物語ではなく

 『二人』の物語を綴りたい。

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