彗星オードブル
@DEMI_PEN
第1話 ナカムラの話
さっきまで行動を共にしてきた仲間が死んだ。友人ではない、仲間だ。そいつとは所属部隊が同じで、何かある時にはバディとして必ず隣にいた。几帳面で毎日同じ時間に起き、就寝前には映像記録を毎日残していた。日記のようなものだろう。
そいつはかなりまっすぐで、何か少しでも間違ったことや小さなミスを犯した時には上官へすぐに報告をしていた。それは己だけにはとどまらず、俺のミスまでしっかりと報告をするやつだった。それで何度怒られたことか。
今や所属部隊も壊滅し、バディも解消されていたがヤツは真面目な顔をして
「二人で行動した方が助け合える、それに君を独りにしたらすぐに死んでしまいそうだしな」
そう言って今のさっきまでついてきたのだ。こいつは、友人ではない。仲間だった。
「俺を独りにしたら、すぐに死ぬんじゃなかったのか。」
地面を掘る体力も手向ける花も持ち合わせていなかったので、顔や肩の砂埃を払い仰向けに寝かせた。空を見るのが好きだったから。もう青い空は望めないかもしれないが、薄汚れた地面や崩壊した建物を見るよりマシだろう。
いざ最後となると言いたい事も思い浮かばないものだ。いい思い出を思い出そうとしたが、それも無駄だった。記憶は思い出そうとすればするほど、どこか手の届かない遠くへ行ってしまうようだった。今の俺にはコイツの顔を見るだけで精一杯。
立ち上がり、埃を払い、荷物を背負った。生存者や安全な場所を探している間、ゆっくりと思い出そう。笑ったことも、怒ったことも、泣いたことも、全部思い出すのは無理だろう。でもこれが俺にできる唯一の弔いだ。
どこへ行こうか。行き先を決めていたのは、いつだってヤツだった。指示に従い俺が前を歩いた。どこへ行ったらいいのだろう。行き先の決め方なんて俺は知らない。
「私の故郷は海に面した町だった、いつかあの綺麗な海をお前に見せるよ」
こんな時に思い出せたのが、他愛もない会話か。でも今は死ぬほど欲しかった会話だ。結局、俺はお前の指示通り動く事しかできないみたいだな。
厳密には指示ではないが、お前が見せたかった海を俺は独りで見に行くことにする。幸い食料と水は多くある。周りも小さな町のような場所だったんだろう、もしかしたら徒歩以外の移動手段もあるかもしれない。
海を見たら今度は、どうしようか。いや、今は海に行くことを考えよう。
だって俺は、独りにするとすぐに死ぬんだからな。
【ナカムラの話】
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