第6回目 『表記ゆれ②』 揺れるどころか座礁しそう

 只今絶賛ご案内中、自主企画『リライト祭り』いよいよ終盤です〜!

 https://kakuyomu.jp/user_events/16818622176275026670


 逸作、秀作、傑作、力作、てんこ盛りです。ぜひ読みにきてくださいね。


 ***


 さて前回ふれました『表記ゆれ』について。覚えでますか?覚えてない方は第5回目見てくださいませ(PR)


『絶対に全部統一しなければならない訳ではない』の定義に基づき、


『ただし、その、見極めにはちょっとした考えがある』についての考察です。


 ◆


 小生が小説を書き始めて、最初に迷ったのは「こと/事」の表記についてでした。

 この「こと」は自分の作品では結構な頻度で出てくるんですよね。説明っぽいのかな?


 まぁ、いつものツレたちの話では、

 

「ひとつの小説の中で、文脈やバランスに応じて使い分けても大丈夫。むしろ、それが自然よね」


 とのこと。


「なんだ、両方使ってもいいんだ」


「ただし、読みやすさと統一感の両立には注意してね」


「統一感? どーゆーこと?」



 聞くところによると、ルールがないわけじゃないらしい。聞けば、いくつかポイントがあるようでした。



【表記ゆれ 克服ポイント】


 ●その① ゆるやかなルールを決めよう



「台詞はひらがな、地の文は漢字で統一しておけば、迷わないから」


「ふーん。それでいいのか」


 たとえば、


 台詞:ひらがな(口語感が出て自然)


 地の文:漢字(読みやすさとリズムを重視)



 このように大まかな使い分けをするだけでも、自然な読み心地になるとのことです。


 これなら出来そうと、ちょっと安心。




 ●その② ページ単位での統一感


「次は、ページ単位での確認することね」


 たとえば、同じ語句(「こと」「事」など)が1ページに何度も登場する場合、それぞれを違う表記にすると読者の目が引っかかってしまうことがあります。そういうときは、短い範囲の中で表記を統一してしまうのがよいそうです。


「連載でもこれなら調整しやすいよね」


「そうあってほしいわ」



 ●その③ 文体のリズムに合わせて


「使い分けの中でも『文体のリズム』は特に大事だからね」


「え?それ言うと混乱するんじゃない?」


「でも、ひらがなが続きすぎると読み込みにくいじゃん」


 などと、ツレの2人が小生そっちのけで話し始めた。頼むから、小生にも理解できるように話して──。


「つまりね。ひらがなが続きすぎると読みづらくなるときには、漢字にして視認性を上げたり、逆に漢字ばかりで重く感じるときには、ひらがなで軽くしたりするってことよ」


「臨機応変?」


「そう。文章の流れで見るんだけど、区別がつかないのなら、ひらがなだけでいいよ」


「まずは、セリフと地の文で使い分けることから始めれば十分だからね」


 ……なんか。軽くあしらわれてる感が否めない。


 まあいいか。小生はまだまだ初心者なので、ひらがな多めで書いていこう。



 ……と思ってたんですけど、早速、詰みましたわ。


 ◇


「ねぇ「バレる」って、どう書くのが正解?」


 ちなみに、最近書いている作品の中で、登場人物が「バレる」という台詞を使うシーンがありました。

 で、この言葉をカタカナでいいのか、ひらがなの方がいいのか、ちょっと迷ったんですね。


 そこで、ツレたちにまた聞いてみました。すると、片方から、


「説明するから、紙とペン出して」


 ときた。はい、出しました。



「①表記、 ②印象、③使いどころ、について説明するね」と説明が始まったんですね。


 ──


 ○バレる(カタカナ)

 ①くだけた ②軽い

 ③口語的セリフやラフな文に最適


 ○ばれる(ひらがな)

 ①柔らかく自然 ②落ち着いた印象

 ③地の文でもセリフでも使いやすい


 ○露見する、発覚する

 ①硬い ②説明的 

 ③文語的 論理的・客観的な地の文


 ──


 つまり、シーンやキャラクターの性格によって、語の印象を使い分けるのがポイントとのこと。


 ○口調が勢いのあるキャラなら「バレる」

 ○落ち着いた語り口なら「ばれる」。

 ○地の文で、やや堅めに書きたいときは「露見する」や「発覚する」といった語を使うのも手だそうです。


「ちゃんとメモった?」


「うん。わかった」


 ふむふむ。何となくわかってきたぞ。




 ● まとめ:表記ゆれとのつきあい方


 表記ゆれは、完全に排除しなくても大丈夫。全てを統一する必要はない。


 大切なのは、「読み手のリズムを崩さないこと」。

範囲内(1ページなど)で整合性を意識。


文体、語り口、キャラクターに合わせて表記を選ぶ。


 ちなみに、プロの作家さんでも、「こと」はたいていひらがな表記を使うそうです。

ただ、歴史小説や文語調の作品では、あえて漢字を使うケースもあるとのこと。


 書きながら、正解を探すより、「何が自然か」「読者にどう響くか」をまずは意識したいと思います。


 ***


「お、上手くまとめたじゃん」


「まぁね」


「その調子で今度は一人称視点と三人称視点の話でもしよっか」


「……銀行の?」


「それは支店と本店」


「じゃあ、物を動かすときの……」


「それは、支点・力点・作用点ね」


「つまり『語り手』の話よ」


「……??」


 と言うわけで、次回は


『あなた誰? 今、誰の目線で話してる?』


 について考察してみたいと思います。


 今回も、お付き合いありがとうございました。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る