第4話 カフェ
駅前のカフェは、思ったよりも落ち着いた雰囲気だった。
窓際の席に案内されて、向かいに座る律くんの顔をちらっと見つめる。
(…今日も、やっぱり落ち着いてるなぁ。)
背筋がすっと伸びていて、でも気取ってる感じはなくて。
声のトーンも、言葉の選び方も、いつも穏やかで安心できる。
それなのに…
どこか、近づきすぎちゃいけないような空気もある。
「なんか、カフェって久しぶりかも。」
「そっか。あんまり来ない?」
「うん。ひとりだと…ちょっと入りづらくて。」
そう言うと、律くんが少しだけ笑った。
「じゃあ、俺と一緒のときは、気軽に入ればいいよ。」
その言葉が、何気なくて優しくて――
思わず、胸の奥がきゅっとなる。
(…ダメだな、また期待しちゃう。)
まだ知ってることなんて、ほんの少しなのに。
でも、この前の飲み会のあとも連絡をくれて。
今日も、ちゃんと会ってくれて。
「律くんって、今どこで働いてるんだっけ?」
気になってたことを、ふと聞いてしまう。
すると一瞬だけ、律くんの手が止まった。
アイスコーヒーのグラスを持ち上げる手が
…ほんの少し。
「…ああ、えっと…小さい会社だから言っても分からないと思うよ。」
(あれ?なんか…少し、間があったような?)
でも、表情は変わらない。
変わらないから、余計に気になる。
「そっか…じゃあ、すれ違ってることはないかなー。」
そう言ってみると、律くんはちょっと目を見開いて、それからまた笑った。
「どうだろう…。もしかしたら、すれ違ってたかもよ?」
その笑顔が、少しだけ苦しそうに見えたのは…気のせいかな。
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