第5話「魔族復興」
毎度馬鹿馬鹿しい、お笑いを…
ここは、異世界キルギア…人と魔族の戦争は終結し、人間は機械の力で勝利する…
そして、一時の平和は確保された…でもそれは、人間にとっての話…
魔王マルコスの復活は、魔族の残党にとっての最後の希望だった…
「血が必要だ…処女の血が…」
フードを深く被って、額の角を隠す魔族の男は、古びた墓場の奥深く…鍵の壊れた鉄格子に囲まれた、ひときわ大きな墓標の前に立って、巨石を見つめていた…
後ろから、現れた赤いドレスの女は、バンダナで、尖った耳を隠しながら、男に声をかける。
「ユニ…」
「エルか…どうだ…いい獲物は見つかったか?」
「街外れの農家に、エレナとテルザっていう…ふたりの処女の親子が、いたよ…」
「親子?」
「血はつながってない、仮の母娘さ…しこもコイツら…人間のクセに、魔力が使えるときてる…まさにマルコス様への捧げ物にピッタリよ…」
「でも、厄介だな…逆に、その能力(ちから)…」
「コイツがいるよ…あの、エルフ狩りをしていてた人間共を、皆殺しにした…私達の、最終兵器…」
そう言って、赤ドレスのエルが、パチッと指を鳴らした…すると、墓場の土が盛り上がる…
「イエス…マスター…」
地面から、這い出してきた…ひとりの女
エルフ…その姿は、意識を抜き取られ後の…そう、あの時のエレナだった…
(サイド:ディープ)
クソッ…63号が、この家に来てからというもの…
「ムッちゃん…もっと」
モゾモゾ…
「ハニー…こうですか…」
クチュクチュ
「そこは、汚いよ」
テレテレ…
「マイハニーの全て…美しいです…」
ペロペロ…
「おいっ!」
毛布をめくる…
「あっ、変態…」
指差される…
「人のベッドで、何してやがる…」
僕とテルザが、寝ていた場所を…いつの間にか、占領されてしまっていた…
「ただの…スキンシップですが…ソレが何か?」
しれっとする、63号
「おま…」
言いかけ、つい詰まってしまう
「お兄ちゃんのエッチ…」
(いや…違うんだ…妹よ…)
キーン…ドドドドーン!!
「ディープ、テルザ…逃げて…」
庭からする、聞き覚えのある異音と、慌てて状況をリセットする形で、扉を開けて入って来る母エレナ…
バリーン!
割れる窓硝子の向こう側に、白い風船が膨らんでいる…
パーン!
風船が、割れると…その中から…
「エ…エレナ…」
※声が重なる
あの時の…僕が愛した…美しい、エルフがそこに…
よく見るとその背後に、一角のゴブリンと、赤服のエルフがいる…
あれ…同じ台詞カブりの記憶が…※
妹を守る様に抱きかかえる母の声が、僕と一致する…
(これって一体…脳の処理能力が、全く追いつかない…まさか…)
気がつくと、妹を僕に預け、母は庭に瞬間移動し、戦闘を繰り広げていた。
「デスシールド展開…」
エレナが、両手を時差を持って、左右別々に回転させると、手の中の…蜘蛛の巣の紋様に稲妻が走り、バリアを張ったと思いきや、それがそのまま攻撃砲に転じた…
「バカな…」
そう言う男ゴブリンは、額の角を失い、そして叫ぶ…
「エルっ!」
もうひとりの、女エルフの肉体は、灰となり消し飛び…骨だけが、宙に浮く…
(この女…エルって言うのか…紛らわしい名前…しかし、あの尖った耳にも骨があるんだな…)
「抹殺…フフッ」
奴等との戦闘を傍観してた、敵側のエレナは…指先から、小型ミサイルを発射する。
「や、やるわね…じゃあ、こちらも…饒舌の、鎌!」
空間から、無数の口が付いた悪魔の鎌を取り出し振るう、母エレナ…
「死ね…殺す…犯す…刺す…切る…ミンチにしてやる…」
口々に、暴言を吐きながら、鎌は敵に向かって光弾攻撃を繰り出す…最後に刃先が、敵エレナの胸元を削った…すると、その肉の内側に別の物体の存在を感じさせる、衣服が見える…
「マスター…加勢します…」
63号が、窓を破壊しながら、部屋から飛んで出て来る。
(遅いし…窓…壊すなよ…)
「待ってたよ…」
そう言って、全身を光らせる…かつての恋人の姿をした、エルフの肉皮は消し飛び…中から、ムツミそっくりの、別個体ロボが現れる…その胸には、64号のマークが、印刷されていた…
「会いたかったわ…お姉さま…フフフ…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます