目覚め

ブルコン

目覚め

森林の中を歩いている。

理由は何となく。

ただ衝動的に足が行くままに歩いていたらここにいた。


太陽の光が葉を避けるように降り注ぎ、

私の黒い髪を洗い流す。


その光は熱いわけではなく、

肌寒い私を適度に温かく染め上げてくれる。


まるで風呂にでも入っているのかというほどに快適で、

少し眠気が頭の中に溜まっていく。


歩く。

歩く。

歩く。


気が付いた時には泉の前にいた。


そこだけ木々が避けるようにぽっかりと空いていて、

どことなく、そう、どことなく、私のように思えた。

思えた。

思えてしまうのだ。


そんなセンチメンタルな気分に浸かっていると、

それを励ましてくれたのかは分からないが、

風が吹き木々の揺れる音が私の鼓膜を震わせた。


分かるけど分からない。

届くけど届かない。

ただやるせない。


足が勝手に動き泉の前で私の体をしゃがませる。


水面には私が映っている。

私だけが映っている。

当たり前だけどね。


水面に映る私は色が溶けており、

ただ造形だけが捉えられた。


特段何もないし、感じられない。

何もないということに何かあるのではないかと疑ってしまうくらいに、

何もないし、感じられない。

どこにでもいる人間の女の一人だろう。


水面を見るのが嫌になってくる。

段々と段々と段々と。


瞬きをする。

体に瞬きをするように動かされる。

そういうものだと無駄に反抗せず受け入れる。


次の瞬間。

泉には私は映っていなかった。

鳥が映っていた。

孔雀という名の鳥が。


水面に映っているのにも関わらず、

私とは違ってカラフルだ。




なぜか、

なぜか、

なぜか、

本当になぜか、

自分でも吐き気がするがなぜか、


この孔雀が私に見えた。

私に見えた。

私に見させられた。

私に見させられてしまった。


主にその羽が。

そのカラフルな羽が。

どこか理想的なその羽が。

どこかで見たことのある色合いをしているその羽が。


風が吹く。

木々が揺れる。

寝心地が良くなるほど静かだ。






誰か私を目覚めさせておくれよ。

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目覚め ブルコン @cogitergosum11

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