第17話
古城について早々、琅に許可を貰いライラを客室へと寝かせた悠希はルシュフと話をする為にルシュフがいるであろう大輝の部屋へと向かった。大輝の部屋には確かにルシュフはいた。だが薬を飲ませる為に起こした大輝は薬を飲んだ後直ぐに再び眠ってしまった為、そんな中で会話をするのもあれだと悠希たちはルシュフの部屋へと移動をしていた。
「……それで話というのはなんだい?」
一人用のソファーに腰かけたルシュフはテーブルを挟んで対面にある二人用のソファーれも座るように悠希に進めながら口を開いた。
「単刀直入にお聞きします。レインさんとはどういう関係ですか?」
進められるがままソファーに座った悠希は口を開いた。
「また唐突だね?知り合いかどうかも確認せずに…ああでもあの世界に渡る瞬間、レインによろしくとは言っておいたからな。レインはね。私の旧友であり、親友と呼べる存在だ。でも何故そんなことを聞く?」
ルシュフは素直に答えた後、問いかける。
「実は…」
悠希は即位式のことやユフィのこと、レインとユフィが両想いらしいのにレインが拒絶をしていることなどを大まかに説明をし始めた。
「…ってことなんです。それでレインさんの呪いについてしりたくて」
説明を終えた悠希は真っ直ぐルシュフを見つめた。
「…呪い?レインは呪われているのかい?」
ルシュフは食いつくように声を上げる。
「わかりません……ただレインさんに向かって呪われた子って言ってる人がいて…」
悠希はルシュフの食いつきように少しだけ困惑しながらも答える。
「……レインと別れてからの状況はわからないから絶対とは言えないが、もしかしたらレインの過去を知っている者がレインを陥れる為に言っているのかもしれない。呪われた子は周知の事実なのかい?」
ルシュフはレインのことを大切に思っているのか真剣な表情をしている。
「…いえ。周知はしていないと思います」
悠希はシャロンやシルヴァとの会話を思い出し、伝えた。
「ならばレインの過去のことを言ってそうだね。私がいなくなってから呪われてしまったのだとしたら周知されていそうだし…」
ルシュフは顎に手を当てて少し考える素振りを見せたあと、口を開いた。
「いったい何があったんですか?」
悠希はそんなルシュフを見て首を傾げる。
「他の過去をぺらぺら話す趣味はないが今回は仕方があるまい。吸血鬼という種族はごく稀にとんでもないくらいの美貌を持った者が誕生する。レインもそれなのだけれど、その美貌が故に犯罪組織に狙われ、家族を目の前で惨殺された上で誘拐された…奴隷としてオークションにかけられる前に救い出され、王宮で保護されたが心を閉ざしてしまっていた時期がある。その過去を知る者がその美貌を呪いだと思っているのだろう」
ルシュフは腕を組んで答えた。
「…だがレインはそのことを気にする奴では無い。他に何か拒否する理由があるはずだ」
話を聞いて納得する悠希に対し、ルシュフは言葉を続ける。
「他に…」
悠希はそれ以上、心当たりがないため難しい顔をする。
「時間がかかってもかまわない。悠希が見聞きしたことを全て話してくれないかい?私がそこから問題点を導き出す」
そんな悠希をルシュフは真剣な眼差しで見つめ、その問いに悠希は難しい顔をするのをやめて今まで見聞きしたことを事細かに話し始めた。
「……というわけです」
そして時間をかけて全てを話し終えた悠希は、これで何か手がかりが掴めるのかと不安そうにルシュフを見つめた。
「恐らく寿命だろう」
腕を組み、黙って話を聞いていたルシュフは導き出したのか口を開いた。
「寿命ですか?」
悠希はどういう事なのだろうと不思議そうな顔をする。
「吸血鬼の平均寿命は千二百から千三百。そして王の任期は五百年だ。生き血を吸うことで年齢が固定されてしまう為、こんな見た目ではあるが私とレインら既に千を超えている。どのくらい遅くに誕生したのかはわからないが遅くにできた子だと言うのならレインがユフィを受け入れた場合、レインは任期中に寿命を迎えてしまう…それだと最後まで支えてあげられることが出来ないし、仮に支えてあげられたとしてもその後、子はいるだろうがユフィは一人ぼっちになってしまう…両想いが本当なのだとしたらレインはユフィを思って身を引き、受け入れないのだろう」
レインは説明するように語りながら組んでいた腕を解いた。
「そんな…」
その話を聞いて悠希はどうにかならないとかと悲しげに声を漏らした。
「…手紙を書く。レインとベルサス宛に…それを届けてくれないか?」
ルシュフは思い立って立ち上がり、近くの棚へと近づいた。
「え、でも…知っているんですか?死んでいるって思われているんですよね?」
悠希はそんなルシュフを目で追った。
「レインは私が生きていることは知っているがベルサスは知らない…でも筆跡で弟はわかってくれる。一国の王である弟と謁見するのにその格好は相応しくないだろうから君は湯に浸かってくるといい。私はその間に手紙をしたためておく」
棚の中から便箋と封筒を取ったルシュフは再びソファーへと戻り、届けてもらうことが決定事項とでもいうかのように手紙を書き始めた。
「わかりました」
そんなルシュフを見て悠希は返事をし、大浴場へと向かった。ルシュフを見る限り落ち度はなさそうなのに何故、死んだことにしたのだろうと疑問に思いながら…
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