『勇者』暗殺計画
間川 レイ
第1話
1.
カンカンカン、と硬い音を立てて、赤さびの目立つ外付け階段を駆け上がっていく。かといって急ぎすぎたりはしない。呼吸を決して乱さない様に。時間にはまだまだ余裕があるし、何より変に息を乱せばこの後の仕事に重大な支障が出ることをよく知っているから。
だから一歩一歩確実に、しかしそれなりの速足で階段を駆けあがっていく。教科書ビルの一角、これから勇者とその一行が通過するダラス通りに面した一室へと。手には我々国家安全保安部が暗殺用によく使う狙撃銃、Kar98kスペシャルモデル。
異世界から持ち込まれた同名のライフルに、我々国家保安本部の技術の粋を尽くして改造を重ねた、暗殺任務の頼れる友だ。消音魔法に、反動吸収魔法。様々な魔術刻印が刻まれている。すでにスコープもゼロイン調整済みで、弾丸も装填済み。変な所にぶつけないよう慎重に担ぎなおしつつ、目的の部屋を目指す。
そして、ついた。そこは打ちっぱなしのレンガが目立つ、がらんとした部屋。かつてこの部屋に置かれていたと思しき教材たちはまとめて壁際に押しやられ、その代わり窓枠の前に狙撃台が設置されている。同志たちはよくやってくれたらしい。そう苦笑するとさっそく用意された狙撃台の上に腹ばいになり、スコープを覗き狙撃体制をとる。
スコープの中に広がるのは人の群れ、群れ、群れ。そこにはダラス通りに押し掛けた無数の民衆の姿があった。そして、押し寄せた民衆が道に飛び出さない様に規制線を張る国防軍の兵士達。だが、そのいずれの顔に浮かぶのは無邪気な笑顔だ。「勇者様、万歳!」「勇者様、ありがとう!」との無数の歓喜の声が聞こえる。『勇者様』にあわよくば差し出そうと言うのだろう、花束を持った若い女性の姿も散見される。異世界から呼び出した『勇者』が甲種天災級魔獣―通称魔王を倒したことがそれほどまでに喜ばしいのだろう。それこそ神話に謳われる勇者の再来のように。
だが彼らは知っているのだろうか。彼らのあがめる『勇者様』は神話の再来などではないことに。『勇者』は確かに超常的な力を持つ。だがそれは、異世界から因果や世界線を超え人間を呼び寄せたことによる、付随的作用に過ぎない。異なる技術文明を持つ他の多次元宇宙から人間を呼び寄せると言う因果の捩れが、この世界の修正力によって、莫大な魔力と強大な身体能力という形に結実したに過ぎないのだ。対象となる素体は10代の少年少女なら誰でも良かったとも聞く。つまり、『勇者』の力の源など、とうに魔道科学的に分析され尽くしているのだ。ある種の人間の形をした兵器として。決して神話の生き物などではない。
それに、『勇者』とはコードネームに過ぎないというのに。国防軍情報部対魔獣潜入工作班ユニットG―それらが彼ら巷で『勇者パーティ』と呼ばれるものの正体だ。所詮は軍の一機構、悪い言い方をするならいくらでも替えのきく鉄砲玉要員。失敗すればまた新しい『勇者』を召喚すれば良い。それだけの話であり、またそれが『勇者』という生き物だ。
それをああも崇め奉るとはね、と思わず苦笑する。知らないとは惨めなものだ、そう思い掛け慌てて頭を振る。そう、勇者がただの使いつぶしのきく人間兵器に過ぎないことは安全保障関係者ならだれでも知っていることだ。
それだけに、魔王を倒した功を讃えて王位を勇者に禅譲するというのは訳が分からない。
確かに魔王の暗殺に成功したことはお手柄といっていいだろう。異世界から引っ張ってきた人間が前任者の屍を超え、よくその任を果たしたのだ。大いに褒めたたえてやればいい。
勲章をやろう、金も美女もやろう。お飾りでよければ地位だってくれてやる。そうすれば強大な力を持つだけの人間に過ぎない勇者も満足するだろうし、民衆も奮起するだろう。俺たちだって頑張ればあのように立身出世できるかもしれないと。
だからこそ、大いに崇め奉らってやればいい。だが、王位を譲るというのはやりすぎだ。国王陛下は何を考えていらっしゃる。高々異世界人に玉座をくれてやるとは何事か。
そこまで考え、いや、と首を振る。『勇者』の管轄は国防軍だ。間違いなく国防軍の宮廷クーデターだろう。『勇者』を神輿に政権を牛耳るつもりなのだろう。国王陛下はお命を盾に禅譲を迫られたに違いない。そう歯噛みする。
そして本来であればそうした事態にそれをとがめるべき宮内省、国務省、典礼省はこの事態を黙認している。おそらくはこの宮廷クーデターで国防軍側に与したのだ。恩知らずの裏切り者どもめ。それによりによってあの異世界人に玉座をくれてやるとは。
俺は以前、『勇者』と呼ばれる異世界人の青年と話したことがある。彼は善良で真面目で、どこまでも平凡な子供だった。そう、善良で誠実で、世間知らずな子供。世界の裏側を覗いたこともないような、平凡な子供。俺みたいなスラムで生きてきたような人間の存在すら知らず、世界は美しく、陽が沈めばまた翌朝には当然陽が昇ると無邪気に信じているかのような子供だった。新型薬剤の試し打ちに使われて、生きたまま腐り落ちる少年少女や、空腹や寒さに耐えかねて、夜を越せずに眠ったまま死んだ俺の妹など、想像すらできないような。そんな光の当たる世界で生きてきた子供だった。
もちろん美点もある。見慣れぬ環境に放り込まれたことに対する戸惑いはあっても、そのことに恨み言は漏らさず。厳しい訓練を受けながらも、自分を慕って集まってくれた仲間のためならどんな艱難辛苦をも乗り越えて見せると無邪気に胸を張っていた彼。「俺のこの力がこの世界の為になるのなら、俺、やります!」そう誇らし気に語っていた。そこにあるのは、慕われたことに対する純粋な高揚と、まるで物語みたいな展開に対する、若干の陶酔。そのすべてが国防軍情報部の演出の上と気づくこともなく。
そんなどこまでも平凡な彼は、さぞや操りがいのあるお人形だろう。きっと彼はこれからもいいように踊らされ続ける。国防軍の望むままに。国防軍支持者の望むままに。最後の最後まで、自分が踊らされていることに気づかずに。
軍隊とは、本質的に領土拡張主義者だ。だが、近年の国防軍の熱狂ぶりは常軌を逸している。甲種天災級魔獣が倒されたからと言って、即座に外征計画を立案するとは何事か。外征計画の立案速度からして、甲種天災級魔獣の討伐前から立案されていた節さえある。
一体奴らは何を考えているのか。甲種天災級魔獣によってもたらされた破壊からの回復こそ最優先すべきだろうに。それどころか、外征に『勇者』の力を用いようとするなんて。それは、大陸列強間で結ばれた、『勇者』の人間国家間戦争への投入を禁止したノワール条約に対する明確な違反だ、それはすなわち、大陸内の全国家との全面対立だと言うことがなぜ分からない。そうなれば我が国は破滅だ。それこそ『勇者』の力を最大限活用しない限り。そこまで考え、背中に氷柱を差し込まれたような感覚に襲われる。まさか、それこそが連中の狙いなのではないかと。
だが、そうなればきっとこれまでの秩序は崩壊する。これまで平穏に暮らしてきた守られるべき民も大勢が死ぬだろう。俺を受け入れてくれた、この国に流れる自由と平等の気風も失われるかもしれない。そうなれば俺の愛した文学も、音楽も失われるだろう。敬愛すべき国王陛下が長年にわたって収めてきたこの国が、一部の愚か者によって食い物にされる。かつてスラムにお忍びで訪れられ、妹の亡骸の横に座り込む俺に、黙ってパンを差し出してくれた優しい陛下の愛した祖国が。誰もが戦場に駆り立てられ、燃え盛る我が家の前で、呆然と愛する人の亡骸を抱える世界になる。そんな未来は断じて避けねばならなかった。
だからこそ『勇者』は殺されなければならなかった。勇者が死ねば、この簒奪劇も宙に浮かぶことになるから。だからこそ魔王を倒した勇者は死ななければならないのだ。
2.
だが困ったことに、先ほどまでかろうじて通信の通じていた国家安全保安部本部とも今では完全に通信が途切れてしまっている。おそらくは制圧されてしまったのだろう。国王陛下直轄の情報機関である国家安全保安部が抑えられたということは、この国を救えるのはもはや、たまたま外周りに出ていて難を逃れたわずかな同志だけとなる。だがそれでもやらなければなかった。
俺はスコープから目を離すと魔道無線機に吹き込む。
「イェーガー・ワンより各位。本部との通信途絶。」
僅かに無線機越しに動揺が広がるのを察して俺は続ける。
「狼狽えるな。俺たちはこの国の剣。……国王陛下のためにも、俺たちだけでもやるぞ」
「……!了解!」
一瞬驚きのさざ波が広がるが、瞬時に収まる。俺は最高に良い仲間を持った。そう思いながら再びスコープを覗き込む。直後、勇者パーティの車列の監視をしていた同志から無線機に通信が入る。
「車列接近!間もなくダレス通りに入ります!」
スコープをそちらに向ければ、確かに勇者一行の凱旋する車列。国防軍兵士を満載した護衛の装甲馬車の群れを先頭に勇者一行を乗せたオープン馬車が走ってくる。にこにこと、民衆に笑顔で手を振る勇者。
それを取り囲む様に、にこやかに手を振る勇者パーティのメンバー達。皮肉気な笑みを浮かべつつ大剣を担いだ大男や、ショートカットの短剣を装備したスレンダーな少女。大ぶりな魔導杖を両手に持ち、三つ編みおさげの眼鏡をかけた少女。さらには神官服に身を包み、目を閉じている若い女性。いずれも資料で見た顔だ。冒険者ギルドから出向してきたと書類上なってはいるものの、経歴に不信点があると保安部の情報セクションからは警報が上がっていたはず。
特に、短剣の少女。国防軍情報部との共同作戦のブリーフィングの際、暗殺部隊の現場指揮官として紹介された少女によく似ている。似すぎと言ってもいいだろう。少なくとも彼女は、あるいは勇者パーティの勇者以外の全員が国防軍情報部のエージェントと言うことなのだろう。クソッタレ。内心呟く。
そしてさらにスコープを動かすと、見つけた。王冠を手にした宰相閣下もそこには同乗しているのを。宰相が王冠を手にするとはつまり、宰相こそがこの宮廷クーデターの立役者なのだろう。まさか敵の親玉まで一挙に仕留められるなんて、と舌なめずりしたくもなるがかろうじて抑える。
そして、腕時計をみる。時刻は作戦決行時間。予定通りだった。
「ブラボーチーム、やれ。」
と短く無線機に吹き込む。その言葉に弾かれたようにブラボーチーム、すなわち陽動班が群衆の群れを抜け出し擲弾を片手に車列に駆け込む。花束を持った少女に変装していた者は切り捨てられ、警備の兵士に変装していた物は護衛の装甲馬車もろともに自爆する。車列は大混乱だ。
そしてオープン馬車はと見ればその混乱に巻き込まれて動きを止めていた。勇者一行のうち『勇者』を除く面々は馬車を降り立ち迎撃の体制をとり、勇者は馬車に残る宰相をかばうように立ちふさがっている。とっさの敵襲にも浮足立つことなく、このような役割分担をできるというのはさすがは『勇者』パーティということなのだろう。あるいはさすが「プロ」というべきか。
現に、勇者の死角から背後を取ろうとしていたペアを、大剣の男が瞬く間に切り伏せ、儀式魔法を放とうと詠唱を続けていた4人組を、お下げの少女の無詠唱魔法が焼き払っている。それを支えるのは神官服の女の補助魔法か。短剣の少女はと見れば、完全に気配を消して接近したはずの仲間に、稲妻のような速度で駆け寄っては、次から次へと急所に短剣を突き立て殺している。さらに、それを狙撃しようとした別の仲間はカウンターで放たれた毒針を受け、紫色の血を吐きながらのたうち回っている。
だが完全に落ち着いているというわけでもないらしい。こういう襲撃の時は狙撃を警戒し物陰に隠れるのが定石だし、プロならそれを警戒するべきだが、『勇者』様と来れば未だに馬車の上で宰相をかばうようにしながら仁王立ちだし、他の「勇者」パーティメンバーは個別に襲撃グループと戦うばかり。精々が勇者や宰相の周りに半透明の膜が貼られているぐらい。それが襲撃の規模をみて、この程度の防御で十分と神官服の女あたりが判断したと言うことなのだろう。
侮ったな。内心呟く。所詮羊に率られれば狼の群れとて怖くはないか。そう考えつつスコープを覗く。全ては陽動に過ぎないと言うのに。本命はこの俺。部下達の襲撃は、全て囮だ。この状況を作り出すための。薄らと貼られた障壁など何の役にも立たない。この狙撃銃に収められているのは、我々国家保安部でもまだ試作段階に過ぎない魔導術弾。だが試作段階にあるとはいえその威力は本物だ。理論上、魔王の攻撃を防ぐ障壁すら貫通しうる。だからこそ、即席ではられた障壁など何の役にも立たないと言うことだ。
だからこそ。俺たちの勝ちだ。そう内心呟く。左右から伸びた照準線と下から伸びた照準線が交わるポイントを慎重に勇者の胸に合わせる。今もまた、俺の狙撃のチャンスを作るため、勇者の元に戻ろうとした大剣の男に、完璧なタイミングで切り掛かった二人組があっさり両断されるのをスコープの端にとらえる。
「すまん、みんな」
そう呟きながらも、俺の狙いは決して勇者の胸から外れない。そして狙いすまされた必殺の弾丸は狙いあまたずまっすぐ勇者の胸へと向かって飛んでいき、易々と神官服の女の貼った障壁を貫通し―ガインという音とともに勇者の剣に弾き飛ばされた。
「馬鹿な!?」
思わずうめく。弾丸をはじけるなんて並の人間にできるわけが―そこまで考え失策に気づく。敵は『勇者』なのだ。因果律を超え、世界の修正力により超常的な力を持たされた化け物。並の人間を相手にするつもりでいた俺が馬鹿だったというだけの話。やけくそで二発三発と続けざまに放つが、すべてあっさりと切り捨てられる。装弾数の5発などすぐに撃ち切ってしまう。
勇者には、傷一つ付いていなかった。全て空中で弾き落とされている。ダメ元で狙った宰相すら無傷だ。あまつさえ、「スナイパー!あそこのビルの中にいるぞ!」と仲間の警備に警告を出す余裕すらある始末。糞っ。思わず歯噛みする。見れば同時に襲撃を開始した同志たちも護衛の兵士や勇者パーティの面々に次々と討ち取られて行っている。耳をすませば、このビルへと駆け寄って来る国防軍兵士たちの軍靴の音。
作戦は失敗だ。俺は小さく舌打ちをする。作戦失敗、即時撤収を意味する赤色の信号弾を打ちあげる。もちろん歯痒さはある。許されるのならふざけるなと怒鳴り散らしたいぐらいには。だが、そんな時間的余裕はないし、これ以上粘ってももはや無駄死にだ。これで一人でも落ち延びられればいいのだが。もはや誰も死なせるわけにはいかない。王国は宰相一派によってとって変わられるだろう。それはもはや防げない。暗黒の日々が訪れる。だからこそ、真実を知る人間は一人でも多く生き延びる必要があった。やがて来る再起の日の為に。
だからこそと俺は一人ごちる。無用となったライフルを投げ捨てて、サブウェポンの黒塗りのナイフを引き抜きつつ。
俺は逃げ出すわけにはいかない。少しでも暴れて、敵の目を引きつけて部下の脱出を援護しなければならない。それが上官の役目という物だ。それに俺は、これでも誇りある国家安全保安部の人間だ。国家が専制者にとってかわられようとしているときそれを見逃すことはできない。となればどうするかだが―その時腰にぶら下げた小箱が目に入った。これは国家保安本部の人間が捕虜になるのを避けるために使う自爆装置だ
これしかないか。俺は一つ頷くと、背後から迫る足音を尻目に助走をつけて窓枠に向かって走り始めた。
3.
ガシャーンとガラスの砕ける音とともにダレス通りに転がりでる俺。ぽかんと見上げている間抜けな国防軍兵士を一人二人とナイフで刺し殺しながらオープン馬車に向かう。混戦ではぐれたのか、オープン馬車の周りに勇者の仲間はいない。僥倖だな、と思いながら馬車へと駆ける。それでも、護衛の兵士達は俺に気づいたのか敵弾が集中する。わき腹が食い破られ、弾がかすめこめかみからの流血で右目が見えない。構うものか。
勇者だけは仕留めなければならない。ただの子供を殺すのは気が引けるが、生かしておけば宰相にいい様に操られ、多くの民衆を虐げるだろう。それは許さない。ここは俺たちの育った国だ。俺の育った町だ。どいつもこいつも気のいい奴らばかり。そんな連中が奴らに虐げられる未来は断じて避けねばならない。だから俺は勇者を殺す。この国のために。かつてスラムの浮浪児だった俺を見出し、ジョンと言う名前と居場所を与えてくれた、国王陛下のために。それにこれはいい陽動になるだろう。部下達の脱出のための。
そして駆ける。自爆装置を片手に駆ける、駆ける。更に敵弾が集中する。左腕が吹き飛ぶ。だがそれでも俺は立ち止まらない。そして、勇者まで後三歩の距離となった時、俺は叫ぶ。
「『勇者』、覚悟!」
そして大きく跳躍。勇者の首にナイフを突き立てようとして。
直後、ドスンという音とともに胸の中央に強烈な灼熱感。かはっと口から血が漏れる。見れば胸の中央に『勇者』の長剣が深々とつき立っていた。抜く手も見せぬほどの神速の突き。悲しそうな顔で俺に深々と長剣を突き立てている『勇者』の姿があった。体から力が抜ける。かなわんなあ、と思わず苦笑する。これが『勇者』と平凡な人間の実力差。だが、そんなことわかっていた。だからこそ、わざわざ叫びながら切り掛かったのだから。勇者が俺の接近に気づけるように。俺を突き刺して、これ以上剣を振るえないようにするために。
剣がずるりと引き抜かれていく。きっとこのまま俺の首を刎ねるつもりなのだろう。ああ、悔しいな、と思う。だが、俺ごときが勇者様に正面から打ち勝てないことなど初めからわかっていたのだ。だからこそ剣が引き抜かれる動きに合わせて勇者に倒れ掛かる。とっさに受け止めてしまう勇者。これで、お前は剣を振るえない。甘いなと思う。だが、その甘さこそが命取りなのだ。俺は残った右腕で勇者にしっかりとしがみつく。とっさに身を離そうとするがもう遅い。もはやこの距離では魔法は使えないし、使わせる余裕も与えない。そして俺は勇者様にニヤリと見せつける様に微笑むと、奥歯にしこまれた起爆装置を起動した。
灼熱の光で焼き尽くされる寸前、みんなの微笑む横顔が見えた気がした。
4.
■■凱旋パレードにおけるテロ事件報告書
以上の経緯より、先日のテロによる被害は国王陛下を含め死亡24名、負傷者57名に上る見込み。主犯と目されるジョン・スチュワード大尉は3か月前に国家安全保安部を薬物使用の罪で懲戒免職処分を受けていることが判明。国家安全保安部は組織的関与を否定しているものの、更なる調査が必要と信ず。なお、ジョン大尉の上官であるラインハルト・フォン・ミュッケルンガー大佐は逮捕の際抵抗した為やむを得ず射殺した。
国防軍情報部課長 カナリス中佐
『勇者』暗殺計画 間川 レイ @tsuyomasu0418
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