第2話
全部が、突然終わってしまう気がして、怖かった。
だから、本当は「引っ越すんだ」
って言うべきだった。
言うタイミングは、何度もあった。
教室で、帰り道で、
笑いながらジュースを飲んでるときだって、
言おうと思えば言えた。
でも——言えなかった。
「そっか、寂しくなるな」
って言われるのが怖かった。
泣かれるのが怖かった。
何より、俺が泣きそうだったから。
結局、何も言えないまま、その日が来た。
トラックに揺られて遠ざかっていく
街並みを見ながら、俺は窓越しに、
小さく手を振ったつもりでいた。
気づけば、俺は小学生になっていた。
その瞬間が、嬉しかったか、
寂しかったかすら思い出せない。
引っ越した先は、大阪。
電車も人の言葉も、空気の匂いすら違って感じた。
まるで異世界に放り込まれたみたいだった。
母とその再婚相手と、俺。
見知らぬ男との共同生活が、始まった。
母はその人を「優しいよ」と言った。
でも、俺にはまだ“父親”と呼ぶことができなかった。
小学校も、最初は地獄だった。
全部が初めてで、
周りの子たちは関西弁で笑い合っていて、
俺だけが「よそ者」のようだった。
名前を呼ばれるたびに、少しだけ心が固まった。
自分がここにいることを、
誰にも知られたくなかった。
そんな気持ちと、小さな勇気が、
毎日ぶつかり合っていた。
小学校に入って、一番最初に感じたのは
「怖さ」だった。
友達がいないとか、
先生が厳しいとかじゃない。
それは——関西弁だった。
まるで喧嘩腰に聞こえてしまうその言葉に、
俺はいつもびくびくしていた。
話しかけられるたびに「怒ってるのかな」
って身構えてしまった。
笑っているのに、
なぜか涙が出そうになるくらい怖かった。
そんな俺を、
周りはすぐに“変なやつ”と判断したんだと思う。
いつの間にか、俺の席には誰も寄り付かなくなった。
給食の時間は地獄で、
目を合わせても誰も笑ってくれなかった。
ある日、俺は帰り道で泥水をかけられた。
理由なんてなかった。
「黙ってるからムカつく」
それだけだった。
泥だらけの体で帰ったあの日、
家に帰っても、母には何も言えなかった。
「学校どうだった?」って聞かれても、「ふつう」
とだけ答えた。
それ以外の言葉を知らなかった。
大阪の空は、なぜか東京よりも遠く見えた。
人生逆転させたい主人公の物語 ベガさん @begasan
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