親との距離を考える
身体はまだ憶えている。
嘘をついたつもりはなくても、父親が「嘘だ」と思った瞬間に、私はビンタを受けた。ヒーターの前で数十分も正座させられたこともあった。
今思えば、あの怒りは「しつけ」という名のもとにあったのだろう。手を挙げる理由を父なりに持っていたのかもしれない。実際、私はグレずに育ったし、道を外れることもなかった。
けれど、今でも父親との距離は少し難しい。
敬語で話す癖が抜けない。何かを頼まれたとき、「嫌です」と素直に言うことができない。どこかでまだ、怒られるんじゃないか、否定されるんじゃないかと、身体が構えてしまう。
これはもう「親子の距離」というより、「昔の記憶との距離」なのかもしれない。
母親とは今でもよく話す。気軽に何でも話せるし、たまに笑い合うこともある。だから余計に、父との距離だけが浮いて見える。
周りのみんなはどうなんだろう。
父親や母親と、どんな距離感で接しているんだろう。
私はたまに、誰かに聞きたくなる。「みんなは、親とどのくらいの距離で生きてるの?」って。近すぎても苦しいし、遠すぎても淋しい。ちょうどいい距離って、どこにあるんだろう。
だから私は今日も、心の中で小さく呟く。
教えて、トントン。
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