第3章 少女の決意
第29話 ミズホと戦う決意
闇の精霊・クロと契約した。
けど正直に言うと、ワクワク半分、不安が倍。
「これから、どうなっちゃうんだろう、私の人生……」
なんて、ちょっとヒロインっぽく言ってみたけど、そんなにカッコよくもない。
今の私、顔が若干引きつってるし。お腹もちょっと鳴ったし。
それでも、「運命が動き出した」なんて言いたくなるくらいには──今、物語のど真ん中にいる気がする。
とはいえ、まずやらなきゃいけないことがある。
図書館の最上階、あの封印の先で手に入れたもの──それをどうするか考えるためにも、急いで戻らなきゃ。
でも、その前に問題がひとつ。あの階段。延々と続く、地獄みたいな階段。
「もう一回……登るの……?」
しかも下りですら1時間かかったのに、登りは何分だろう?考えたくもない。
つい、ポケットに入ってる“例のボタン”を触ってしまう。
──理事長から渡された、どこかに飛ばされる「ワープボタン」。
「ミズホ、ダメよ。それは本当に最後の最後。どこに飛ばされるか分からないんだから」
背後から声。エリーだ。
やっぱり見抜かれてたか。私がボタンを押そうか迷ってたこと。
ふふっ。さすが、私の親友。
表情を見ただけで気持ちを読んでくるなんて……まるで心の鏡みたい。
「うん、わかってる。使わない。まだ……今じゃないよね」
私は気を取り直し、クロとエリーと一緒に再び階段を登り始めた。
途中、クロがぐでぇ……っと私の肩の上で伸びてたけど、私は決してあきらめなかった。
ぜぇぜぇ言いながら、なんとか、約1時間後。ようやく、図書館に戻ってきた。
──そこで目にした光景に、息が止まった。
「……っ、これは……!」
広間の中央、青白い結界のような球体の中に、理事長とアマンダ先生が閉じ込められていた。
「理事長! アマンダ先生っ!」
すぐ駆け寄ろうとしたけど、結界の内側にいる二人は動かない。無傷のようだけど、気を失ってる……。
そして、その前に立っていたのは──
白いローブ、仮面で顔を隠した人物。行く時に遭遇した、ホーリーライトの者と同じ雰囲気。冷たく、静かで、底知れない。
「あなたが……この二人を?」
「ええ。今のところはね。無事よ。……でも、それもあなた次第」
その声は女の人のものだった。抑揚の少ない、でも底に棘のある声音。
「そこで、取引よ。あなたが封印の先で手に入れた“それ”──渡しなさい」
「……嫌よ!」
即答だった。
渡すわけがない。
クロは──あの子は、私が守るって決めた。
「この子は、私が選んだ“力”。誰にも渡さない!」
「ミズホ、相手はかなり強いニャ。戦うなら、覚悟を決めるニャ」
クロが、私の肩の上で小さく囁く。
分かってる。あの結界も、白ローブの魔力も……どれも普通じゃない。
だけど、それでも──私は引かない。
「エリー、下がってて。私、やるよ。やるって決めたんだ。クロと一緒に」
この瞬間、自分の中の何かが静かに燃え上がった気がした。
クロと契約して、初めての戦い。
闇の精霊の力──それを、この手で使う。
怖くないって言ったら嘘になる。でも、私の中には確かな意思がある。
だって私は、ただの「問題児」なんかじゃない。
もう「無鉄砲な優等生」でもない。
私は、篠崎ミズホ。
闇の力を持ち、誰かを守るためにここに立っている、魔法使いだ。
──さあ、いこう。
この力がどこまで通じるのか、試してみようじゃない!
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