第25話 エリーとミズホの大調査
「なんか悔しいわね」
唐突にそう言ったミズホの目は、いつものおちゃらけたそれじゃなかった。
「ミズホ?」
「こうなったら、盗まれた薬品の行方を――私が見つけてやる!」
彼女が立ち上がると、空気がピンと張り詰めた。
悔しさを真正面から受け止めて、自分で答えを出そうとしている。
その姿に、私は思わず微笑んだ。……ほんと、放っておけない子。
「解決するのはいいとして、どうやって?」
「とりあえず分かってるのは、盗まれたのが“ココロソウ”の粉末だってことだけ」
ココロソウ――魔法薬の基本中の基本。
初級の回復薬に使われる、ありふれた材料。けれど――
「いや、盗まれたのは“上級者用”のよ」
「えっ? なんで分かるの?」
「先生に疑われてたとき、棚のラベルが無くなってるのを見たの。上級者用の方だけ」
さらりと言ったけど、それってすごい観察眼よ、ミズホ……。
上級者向けのココロソウとなると、用途は限定される。研究目的、高度な薬の素材、あるいは……売買目的も考えられるわね。
「とはいえ、あなた一人ではやらせないわ。私も手伝う」
「エリー……いいの?」
「当たり前でしょ。友達が疑われて、黙っていられるわけないじゃない」
そう言った私に向けた笑顔は、心からのものだった。
「ありがとう!よーし、犯人ぜったい見つけてやる!」
まず向かったのは、学園の中央警備室。監視カメラが設置されている場所。
「やあ、ミズホちゃん。さっきは大変だったね」
「ほんっとだよー。犯人見つけたらマジでボコボコだから!」
「……ちょっと待って、あなた、守衛さんと普通に話してるけど。顔広すぎじゃない?」
「んー、いろんな人と仲良くするのがモットーだからね!」
えぇ……普通は学園の守衛さんとそんな親しくならないと思うんだけど。
「というわけで、監視カメラ見せてほしいんだけどー」
「別にいいけど……先生たちも見に来たけど、結局手がかりはなかったってよ?」
「まっ、それは私たちで判断するから。はい、再生よろしくっ!」
映し出された映像に、私たちは思わず前のめりになった。
黒いフードの人物――性別も年齢もわからない。でも確かに、薬品を選び、素早く手に取っている。
「……あれ?」
「ミズホ、どうかしたの?」
「あの人……他の薬品には一切目もくれずに、あれだけを真っ先に取った」
――つまり、その薬品の位置を最初から把握していたということ。
完全に“計画的”な犯行。
「犯人は、薬品室の構造に詳しい人の可能性が高いわね」
私がそう言った瞬間――別のモニターから、悲鳴のような声が響いた。
「どこ!?」ミズホが声を上げる。
守衛さんが確認すると、映像が切り替わった。
「……あった。学園の中心にある、噴水広場だ」
守衛さんが慌てて飛び出していく。
「私たちも行ってみよう!」
「ええ!」
ふたりで駆け出したその先――
待ち受けていたのは、思いもよらない、衝撃の光景だった――。
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