第20話 エリーと気になるあの子

私は、篠崎ミズホという子について少し興味を持ち始めていた。

だから、クラスメイトに彼女のことを聞いてみたの。そしたら――


「ミズホさんですか?そうですね、学校でトップクラスの実力がある方でしょうか」


――ふむ、やっぱり実力者なのね。あの模擬戦での技術も納得だわ。


別の生徒に聞くと、


「し、篠崎のこと!?ひぃっ……か、回答は控えさせていただきます……」


えっ、なにそれ?一体、彼女に何をされたの……?(想像が先に走ってしまう)


他にも、


「ミズホちゃん?いいよねー、私のような平民にとっては憧れな存在だねー。優しいし、勉強も魔法もできるし!」


と憧れの視線を向ける子もいれば、


「ミズホ?ホントにどこウロウロしてるのかしら。今度見かけたら、さっさと図書館に本を返しに来なさいって伝えてくれません?」


と、ちょっと呆れている様子の人まで。


……なんというか、本当に色んな顔を持っている子みたいね。

でも、それだけ“印象に残る子”ってことなのよね。目立つのは才能の証拠。

それに、彼女のことを語るみんながどこか楽しそうにしてるのが、ちょっと不思議で――少し、羨ましくもあった。


「ふふっ……もしかしたら、意外とすぐにまた会えたりしてね」


なんて、冗談混じりに呟いた――その時だった。


ドカーーーン!!


耳をつんざくような爆発音。心臓が跳ね上がる。


「えっ、なに……!?」


音のした方を振り向く。――あれは、魔法薬の実験室!?

急いで駆けつけると、黒い煙がモクモクと立ち込めていて、まるで戦場のような有様だった。


「ゴホッ、ゴホッ……」


煙の中から現れたのは、顔も髪も真っ黒になった――そう、まさにその人。


「……篠崎さん!?」


「やっば……またやっちゃった……」


「あなた、大丈夫!? 火傷とかしてない!?」


「いやー、ちょっとね、教科書から“ほんのちょっと”外れた配合を試してみたら……大爆発☆」


こ、この子……想像以上に自由すぎる……!


そこへ、颯爽と現れたのは、凛とした空気を纏った少女。


「ミズホ!」


現れたのは、生徒会の副会長――九段シキ。ああ、以前、留学初日に挨拶した子だわ。


彼女が素早く魔法陣を展開し、ロープでミズホをぐるぐる巻きにするという手際の良さに、私は開いた口が塞がらなかった。


「そ、そんな〜!?手加減ってものをだねぇ!」


「前回は逃げられたけど、今日は逃がさない。覚悟しなさい、ミズホ!」


「文字通り、お縄についてるんですけどぉ〜〜!」


「……やれやれ。あっ、エリン様。お見苦しいところを……申し訳ありません」


「い、いえ……」


(あまりにテンポが早すぎて、思わず見とれてしまった……)


「では失礼。ミズホ、貴女を生徒指導室に連行します」


「ひえぇぇ〜!勘弁してぇぇ!」


あっという間に、ミズホは煙の中へと消えていった。連行されながらも叫んでいた声が、最後まで響いていた。


……なんというか、想像を遥かに超える破天荒っぷりだった。

でも――


(おかしいな。なぜか、ちょっと笑ってしまう)


その姿が、なぜかとても生き生きとして見えた。

爆発させて、怒られて、でも逃げない。ごまかさない。むしろ正面からぶつかって、時には巻き込んでいく。


私が求めていたのは、こういう“予測不能な存在”だったのかもしれない。


ふふ、やっぱりもう少し――彼女のこと、知りたくなってきたかも。


これがまた、私の中の「なにか」を確かに動かしたのだった。

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