第16話 ミズホとホーリーライトの事実
「困りますね、理事長。あなた方にこれ以上、うろつかれては――」
突然現れた白いローブの人物が、冷たい声で告げる。
なに、あの人!?
理事長とアマンダ先生を襲ってきたこの白ローブ……どう見ても味方じゃない。だけど、その正体は全然分からない。何者なの……?
「うろうろされて困るというのは、闇の精霊のことがあるからじゃな?」
理事長の言葉に、ローブの人物は薄く笑った。ぞわっとする。
「なるほど。そこまで把握しているとは……さすが教会騎士団長、といったところですね。どうやってこの世界に入り込んだのかは、だいたい察しがつきますが……これ以上、スパイどもに詮索させるわけにはいきません。あなた方を拘束し、協力者を一網打尽にしましょうか」
――え、なにそれ、完全に悪役ムーブじゃん!!
「ワシらを甘く見るなよ、若造が!」
理事長が叫んだ瞬間、まばゆい光が炸裂した!
アマンダ先生もすぐさま魔法を放つ。二人の光魔法が同時に放たれるけど――白ローブの人物は、淡々と防御魔法で受け止めた。
ん?ちょっと待って? 今の魔法って……闇魔法!?
「ほぅ……この世界で“闇”を忌むとされるホーリーライトが、自ら闇魔法を使うとはな」
理事長の低い声が響く。
うそ……やっぱり、あのローブの人ってホーリーライトの関係者!?
しかも、闇魔法を……?
え、ちょっと矛盾してない!?
ホーリーライトって“闇を排除する”って言ってたはずじゃ――
「なるほど……闇魔法を世間から遠ざけるために、あえて“恐ろしいもの”だと刷り込んでいたわけか。自分たちだけが独占するためにな」
うわ……なにそれ最低!
人には「忌むべきものだ」って教えておいて、自分たちはちゃっかり使ってるなんて――ずるい、ズルすぎる!
怒りがふつふつと湧いてくる。なのに、今の私じゃ何もできない。
遠くから見ることしかできないのが……悔しい。
でも――今は、先生たちを信じるしかない。
私とエリーは、決意を新たにして階段を下り始めた。
***
どこまで続くの、この階段……。
進み始めて10分、20分……30分!?
延々と続く暗くて冷たい石の階段を、私たちは黙々と降り続けた。
「……まさか、1時間近くかかるなんて」
ようやく先に光が見えて、階段の終点が見えてきたときには、足がガクガクしてた。
でも、それと同時に胸がどんどん高鳴っていく。
――この先に、私が“声”を聞いた存在がいるの?
振り返って階段を見上げて、ふと思う。
これ、帰りはまた登るのよね?
……いや、やめよう。今は考えないでおこう。
理事長からもらったワープの鍵もあるけど、使い方も飛ばされる場所もわかんないし、できれば頼りたくない。
「ミズホ、ここが目的地みたいね」
エリーの声に顔を上げると、目の前には大きな――いや、“巨大な”と言っていいくらいの、重厚な扉がそびえていた。
ああ……これは、もう絶対何かあるってやつでしょ!
恐る恐る手をかけて、前に押してみる……開かない。引いても、ダメ。
えっ、壊れてる? と焦ってたら――
横に引いたら、ゴゴゴゴゴ……と音を立てて、扉がゆっくりとスライドした。
「えっ、そういう構造!?」
「ま、まあ……開いたんだからよかったじゃない、ミズホ!」
エリーの言葉に、苦笑いしながら頷く。
そうだよね。開いたんだから、進まなきゃ。
でも……胸が高鳴ってる。いや、これは“緊張”に近いかもしれない。
この先に、何がいるの?
――“闇の精霊”って、どんな存在なの?
私の中の好奇心と、不安と、ほんの少しの恐怖が交じり合って、鼓動が速くなる。
でも、もう迷わない。だって、私がここに来たのには、ちゃんと意味があるんだと思うから。
「行こう、エリー」
「うん。一緒に、ね!」
私たちは、扉の向こうへと一歩を踏み出した――
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