星を探すヘビ(童話)

カラスのカンヅメ

第1話

 森の奥深く、小さな青いヘビが住んでいました。名前はアオ。ほかの動物たちは、足のないアオを見て「気味が悪い」と避けていました。アオは、ひとりぼっちでした。


「どうして僕は生まれてきたんだろう?」


 ある日、アオは空を見上げて、ふと考えました。ほかの動物たちは走ったり、飛んだり、歌ったりしている。でもアオには、何もできない。ただ地面を這うだけ。それが悲しかったのです。


 ある夜、空にひときわ輝く星を見つけました。


「ねえ、星さん。僕の生きる意味を教えて?」


 すると、星はやさしく光りながら答えました。


「それを見つける旅に出てごらん」


 アオは決意しました。森の外へ旅に出ようと。




 旅に出たアオは、さっそく困難にぶつかりました。森の動物たちは、アオを見るなり逃げてしまうのです。「ヘビは怖い」「ヘビは危険」と言われ、誰も近づこうとしませんでした。


「僕は何のために生まれてきたんだろう……」


 心が沈みかけたそのとき、小さな声が聞こえました。


「助けて……!」


 アオが声のするほうへ行くと、倒木の隙間に子リスが挟まっていました。


「動けないよ……苦しいよ……」


 アオは考えました。いつもなら、ご馳走だ。でも、今は――。


 アオはするすると細長い体を活かし、木の隙間に入り込みました。そして、優しく子リスを巻き取りながら、そっと引っ張り出しました。


「助かった……! ありがとう!」


 子リスは涙ぐみながら、アオにお礼を言いました。



 それからも、アオは旅を続けました。


 ある日、巣から落ちた小鳥を見つけました。アオは、木の幹に巻きついて、少しずつ高いところへ登り、くちで小鳥をそっと持ち上げました。無事に巣に戻った小鳥は、ピヨピヨと喜びの歌を歌いました。


 またある日、川に落ちたクルミを拾えずに困っているリスたちを見かけました。アオはすいすいと川を泳ぎ、クルミを取りに行きました。


「ありがとう、アオ!」


「すごいね、アオ!」


 少しずつ、森の動物たちはアオを怖がらなくなりました。しかし、少しずつアオの体は、細く痩せていきました。






 ある夜、アオはまた空を見上げました。


「ねえ、星さん。僕は生きる意味が、見つかったよ」


 星は静かに、けれど力強く瞬きました。


「よく頑張ったね」


 アオは、今までのことを思い返しました。助けた子リス、巣に戻した小鳥、クルミを運んだ日々。誰かのために何かができる。それが、アオにとって何よりもうれしいことだった。


 しかし、アオの体は次第に弱っていきました。旅を続けるうちに、食べ物を見つけることが難しくなり、力も尽きていました。


「僕は、誰かを助けるために生まれてきたんだよ……」


 静かに目を閉じると、空の星がやさしく輝いていました。


 アオの体は冷たくなっていきましたが、その表情はどこか満ち足りたものに見えました。


 そして、夜空には新しい星がひとつ輝きました。



 おわり

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