第3話 あららかわいそうに。でも大丈夫ですよー。
タローは神殿を探索している最中、徐に腕を組んで満足げに呟いた。
「うーん、『さあ、案内してもらおうか。神とやらがいる場所に。』私にしてはカッコよく決まりましたねー。無理に渋い声を出しすぎて喉を痛めましたが……。」
神殿の中を進むうち、何かを求めてさまようかのように徘徊する化け物の群れを見つけたタローは、異世界で魔物と遭遇した時のように軽く蹴散らそうとした。
しかし、その姿をよく見ると、腰にわずかながらそれぞれ柄の描かれた布の切れ端が見受けられた。
「おやおや? ……もしやあなた方は、生贄に捧げられた女性たちの成れの果てなんですかねー? それじゃあ、試しにこうしてみましょう。」
タローは化け物の群れに手をかざして光を放ち始めた。その光は空間全体を満たし、化け物たちはみるみるうちに若い女性の姿に戻っていった。
タローは、無事に元の姿に戻った女性たちを見て、満足げに頷いた。タローの魔法で人間に戻るだけでなく、生贄として捧げられた際の恐ろしい記憶を消された女性たちは、自分が何故ここにいるのか分からず混乱していた。しかし、タローの穏やかな表情と優しい言葉に、彼女たちは少しずつ安心感を取り戻していった。
「ご安心くださいな。皆さんはもう生贄にされることはありませんし、これからは自由ですよー。」
タローは柔らかい口調で女性たちに告げた。彼の言葉に女性たちは戸惑いながらも、次第にその言葉を信じるようになり、生贄として捧げられる危険のない場所へと連れ出されることに期待を抱くようになった。
元の姿に戻った女性たちをまとめてワープで隣町に連れ出すと、タローは彼女たちを奉行所に預ける手配をした。奉行所の役人たちはタローの説明を受け、彼女たちを保護することを約束した。
「お前は先刻の……いったい何者なんだ?」
「いやいや、私はただの旅人ですよー。そんなことより皆さん、あの村からは離れて自由に生きてくださいな。もう変な風習があなた方を縛ることはありませんからねー。」
タローの言葉に、女性たちは感謝の気持ちでいっぱいになり、何度も彼に礼を述べた。そんな彼女たちに対し、タローは軽く手を振って別れを告げた。
「さて、次はあの村の神様とやらの正体を暴く番ですねー。」
タローは不敵な笑みを浮かべながら、再び神殿にワープした。生贄に依存する村の問題を解決するために、彼は神殿の奥に潜む真の敵と対峙する決意を新たにした。
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