タローの日本観光
飯田沢うま男
第1話 あー、さっそく台無しですねー。
数々の異世界を渡り歩く冒険者・タローは、のどかな田園風景が広がる田舎を歩いていた。
「うーん、日本に帰ってきたって感じですねー。まあ、私が最初にいた時代から600年ほど前ですし、これほどのド田舎で暮らしたことはないんですけどねー。」
彼の言う通り、ここは遠い昔の日本だった。農民が田畑を耕し、武士たちが戦を繰り広げる戦乱の世。彼はそんな時代に生きる人々の暮らしをちらっと見に来ただけ──そのつもりだった。
タローが景色とそよ風を楽しみながら歩いていると、前方に物々しい雰囲気で歩く村人たちと、彼らに引き連れられた数人の若い女性の姿が見えた。
タローの姿を見た女性たちは、涙を浮かべながら必死の形相で叫ぶ。
「お願いします!助けてください!」
村人たちは女性たちの口を塞ぎながらタローに愛想笑いを送ったが、タローは助けを求めてきた女性たちを見逃す気はなく、彼女たちを連れてどこかへ向かう村人たちの足元に催眠効果を持つ魔弾を投げつけた。
「うわー、てがすべったー。」
着弾によって拡散した魔力に包まれた彼らはあっという間に眠りに堕ちた。
村人たちが眠っている隙に女性たちを連れて隣町へワープし、彼女たちの身に何が起きたのか尋ねてみる。すると、女性たちは恐怖と戸惑いを隠せないながらも、少しずつ事情を話し始めた。
「私たちは、村の掟に従って、生け贄にされるところでした……」
彼女たちの言葉に興味を示したタロー。昔の日本でそのような文化があったことは知っていたが、自分がその場面に遭遇するとは思っていなかった。さらに話を聞くと、村は長年、豊作を祈るために神に生け贄を捧げる習慣があったという。しかし、最近は災厄が続き、村人たちはますます生け贄に依存するようになっていた。
タローは静かに考え込んだ。今いるのが異世界ではないにも関わらず、自分が首を突っ込むべき問題があるようだ。村の問題を根本から解決しなければ、彼女たちのような犠牲者が出続けることになる。
「んー。まあ、大丈夫でしょう。今後こういうことが二度と起きないように、私が何とかしますからねー。」
タローは決意を固め、彼女たちを安心させるために優しく微笑んだ。次に彼が向かうのは、村の背後に潜む真実を暴く冒険だった。
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