第17話 ララ
この牧場で一番活躍しているのはララだ。彼女が慣れた手つきで多くの仕事をこなしていく。ここではなくてはならない人だ。彼女がここまでできる人だとは思いもよらなかった。屋敷にいた時は・・・。
ララは屋敷ではあまりできの良くない、目立たない召使だった。田舎から出て来て我が家の召使として奉公することになった。遠視のため丸い眼鏡をかけ、うつむき加減で暗い印象があった。そのために先輩の召使からいじめられることも多かった。
だが彼女はめげなかった。いや、気にしていなかったという方が正しいのかもしれない。いくら叱られてもいつも通り、マイペースを保っていた。
その彼女がどういうわけか、私付きのメイドになった。多分、あまりのトロさに私が苛立って屋敷から追い出してしまうだろう・・・先輩の性格の悪い召使がそう考えたのかもしれない。1種のいじめだ。
「お嬢様。ララです。よろしくお願いします」
ララはおどおどしながら私にあいさつした。その時、私は彼女に対して特に何の印象もなかった。屋敷にずっと閉じ込められ、嫌を通り越してあきらめた時期に入っていたので、召使のことなどどうでもよかったのかもしれない。
彼女はよく気が回るわけではなかったが、仕事はきちんとした。私の身の回りのお世話や部屋の片づけ、掃除など・・・。いい加減なことしかできない召使が多い中でこれは貴重だと思った。
それに彼女の特技が私に心を癒してくれた。これが大きい。だから屋敷では彼女がずっと私付きのメイドだった。そうなれば先輩召使が意地悪をしなくなり、彼女も居心地がよかったようだ。
ララには得意なものがある。それは物語だ。我が家の書庫には多くの書物がある。その中にはおとぎ話から恋愛小説まで多くの物語の本があった。彼女はそれをすべて読破していた。仕事の合間や夜にそれを借りて読んでいたのである。
彼女はそれらがすべて頭に入っている。私は寝るときに彼女に頼んでみる。
「ララ。王子様が出てくるような話を・・・」
「わかりました。ではシンデレラを・・・」
彼女まるで朗読するようにお話をしてくれる。毎夜、いろいろなお話を聞いて私も少しは物語に通じるようになった。
彼女の特技はそれだけでなかった。書庫の本をすべて読み終わったら、今度は楽器に興味を持った。彼女は独学で譜面を読み、笛やピアノ、バイオリンまで弾き始めたのである。このままでは大音楽家になる・・・そう思われたが、わが家が没落してその修行(?)は途中で終わってしまった。でも笛は持ち出せたので、私が頼めばよく吹いてくれる。
夜の牧場で突きを見ながら聞く笛の音はなかなかいい。こんなことは王都では味わえない。
牧場に来てララが本領を発揮した。田舎の出というからこんな生活に慣れているのかもしれない。
私は乳搾りなどやったことはないが、ララが教えてくれた。なんでも屋敷に来る前は牧場に奉公に出ていたらしい。
「お嬢様。こうやって・・・」
「こう?」
「そうです。やさしく・・・」
彼女は丁寧に教えてくれた。その甲斐もあって私にも乳搾りができるようになった。
牛舎の寝藁の交換も最初はララがやっていた。私も手伝ったが、これにはすぐに腰が痛くなって逃げだした。それでもララは一人でそれをやっていた。かなりの重労働なのに・・・。
だが牛たちが自分たちでやるようになり、ララの仕事が軽くなって別のことをやってもらうことにした。
それは畑仕事だ。家で食べる分くらいは作らねば・・・。町まで出ないと市場はない。ここで暮らすにはある程度の自給自足が必要なのだ。
ララは畑仕事もできた。小さい頃から農夫の両親のお手伝いをよくしていたそうだ。鍬をもってザックザックと耕していく。それでみるみる広い畑が出来上がるわけだが・・・。
だがこれには裏がある。私はあの姿に変身する。
「シンデレラ降臨!」
それで剣が使えるようになる。私の剣にはいろんな機能が詰め込まれている。その剣には土を耕す機能が付けられている。本当は自由自在に土を掘る機能だが・・・。それで私が畑全体を勢いよく耕す。
「こんなもんでいいかしら?」
「よろしゅうございます。あとは私が・・・」
ララがならして畑にしていく。でもこれだけでも大変だ。あとは種をまいて、水やり、周囲の雑草を引いて・・・やることは山ほどある。彼女に根気があって腕力が強いからできるのだ。
これはララに秘密にしているが、リュバンが作物の成長を魔法で速めている。村人に変に思えないほど・・・。それで小麦や野菜がすくすくと成長して、困らないほど、いや余るほどにできる。それらは倉庫に貯蔵しておく。傷まないように魔法をかけた箱に入れて・・・。
あとは鶏だ。鶏の世話も私には未知の分野だった。しかしここもララが役に立った。エサのまき方から鶏舎の掃除、採卵まで・・・。ここの鶏は健康だから卵がおいしい。町の市場に売りに行けばかなりの額になるだろう。だがそうはしない。私には考えがあった。それは・・・。
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