第14話 再生魔法

 舞台は整った。リュバンは呪文を唱え、体をくねらし、杖を大きく振った。すると辺りが急に暗くなって稲光が光った。いよいよ何かが始まる。


「さあ、よみがえれ! 死せるものよ! 生き返れ!」


 リュバンが叫んだ。すると雷が牧草地の真ん中に落ちた。


「バーン!」


 閃光が放たれ、大きな音が響き渡った。そのすさまじさにララは「きゃあ!」と悲鳴を上げる。ソワレは平気な顔をしているが足が震えている。私は何が起こるか、じっと雷の落ちた場所を見ていた。

 しばらくして雲が晴れて日が差してきた。私は見渡してみた。


(終わったの?)


 だが牧草地に変化はない。草が生えてもいない。リュバンは一仕事終わったように「ふうっ」と息を吐いている。


「リュバン。牧草は?」

「あっ! そうそう。牧草でしたね」


 彼女は軽く杖を振った。すると草がどんどん生えてきて、見る見るうちに草の絨毯を作った。


「では木の方も・・・」


 彼女は杖をもうひと振りした。すると枯れていた果樹が生き返り、葉を出したかと思うと実までつけだした。リンゴやオレンジにブドウまである。また他の庭の木も元気になって葉を繁らせている。


「すごいわ!」


 私は感嘆の声を上げた。リュバンがこれほどの魔法使いだったとは・・・


「さあ、これで牧場は元通りですね」

「ええ、リュバン。ありがとう。でもすごいわね。雷を落としたかと思うと草や木をよみがえらせるなんて・・・」

「それほどでも・・・。でも雷を落とすのはかなりの魔力を使いますので。植物を生き返らせるのは簡単ですが」


 そこで私は「ん?」と引っかかった。


「草や木を生やすのは簡単なの?」

「ええ、そうですよ」

「それじゃ、雷なしでそれはできるの」

「もちろんできます。でもお嬢様が魔法をあまりに期待されているものですから、私のとっておきをお見せしようと・・・」


 リュバンは親切心で雷を落としただけだった。まあ、牧草や果樹が復活したからいいとしよう・・・私はそう満足していた。だがソワレが言った。

 

「お嬢様。牧場はできましたが肝心なものが・・・」

「肝心なもの?」

「ええ、牛や鶏などの家畜が・・・」


 それを聞いてはっとした。牧場が火事になって逃げだしたのだ。これも私たち普通の人間の力ではどうにもならない。ここはまたお願いするしかない。


「リュバン、お願い!」

「わかりました。でも魔力が残っているどうか・・・。また雷を落としてから・・・」

「雷はいいから。とにかく家畜に戻って来てもらって」


 私の願いにリュバンはつまらなそうに杖を振った。だが何も起こらない。


「リュバン。何も起こらないけど・・・」

「おかしいですね。魔法は完璧だと思うのですが・・・」


 すると遠くからドドド・・・と地響きがしてくる。


「な、なに!」


 するとその正体がやっと見えた。牛や馬、羊に豚、そして鶏・・・家畜がものすごい勢いでこちらに向かって来た。そしてそれらは自ら柵を乗り越えて牧場に中に入って行く。


「ものすごい数だわ。こんなに飼っていたのね」

「そのようですね」

「これで牧場は安泰だわ」

「ではもう一仕事、お願いします。牛舎など家畜を入れる小屋を作ってください。私は魔力をかなり使いました。消耗しましたので休んできます。あとをよろしくお願いします」


 リュバンはそう言って丸太小屋の方に歩いて行った。私たちはうんざりして顔を見合わせた。まだまだ仕事はあるようだ・・・。



 牧場にやって来た動物を調べてみた。まずは・・・乳を出す牛が数頭いる。乳搾りをして出荷すればお金が稼げるだろう。そのためには乳搾りをする作業小屋を用意しなければならない。


 馬は移動手段に貴重だ。鞍をつけて乗ってもいいし、馬車を引かせてもいい。数頭いるがどれもおとなしい。私は栗毛の馬をファンタと名付けて私専用の馬にした。これでチャオをわざわざ天馬に変身させて乗らなくてもいい。

 ファンタに鞍をつけて乗ってみた。天馬で練習済みだから難しくない。


「ファンタ! 行くわよ!」


 牧場を走らせてみた。吹き渡る風が爽快だ。天馬と違ってファンタは力強く大地を蹴って走る。かなり揺れるがそれがいい。毎日乗り回していたら、私の乗馬の腕はかなり上がるだろう。


 羊はそのまま放牧して、毛が伸びてきたら刈り取るつもりだ。毛刈りの技術を身につけねば・・・いや、私の剣にそんなモードがあったような・・・。この毛を紡いで毛糸にして暖かそうな物を作ったならとも思うのだが、そこまで手がかけられないだろう。だから羊毛は出荷してお金に変えよう。それで着るものを買えばいいか・・・。


 豚はどうしよう。太らせて食べるか。それとも出荷するか。いやいやそれはできない。食用だと割り切ればいいが、なついてくるとかわいそうな気がしてならないだろう。


「豚は村の人にお願いするか・・・」


 残念だがこうするのが一番いいような気がした。後々見るとそれでよかったのだ。豚の世話まで手が回らなかったから・・・



 鶏は卵を産むから貴重だ。ある程度、まとまった数があるから、毎日、卵が豊富に手に入るだろう。生みたて卵で作る料理は格別に違いない。考えるだけでよだれが出そうだ。とにかくそのためには鶏舎を建てねばならない。


 こうすると家畜だけでも様々な仕事をしなければならない。

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