第13話 再建
何もかも失った私はまずデザート家を建て直さねばならない。これがこの家を受け継いだ私の使命だ。それにはまず牧場事業などで財を増やして「家」を大きくしなかればならない。
コロ牧場の姿を召使の話から想像していた。どこまでも広がる青々とした牧草地が広がり、多くの牛が放牧されている。丸太つくりの大きな家と牛舎が立ち並び、使用人が忙しく働いている。近くには鶏舎があり、卵を産む鶏の鳴き声が聞こえる・・・そんなのどかな光景だ。
だが私は目の前の牧場はどうだ。焼け焦げた小屋のような建物がいくつかあり、牧草地も焼けた跡があり、荒れ果てた地面が露出している。牛などの家畜の姿はない。裏に回ると鶏舎もあるが、網が敗れて逃げ出したようで何もいない。
「誰か! 誰かいないの!」
私は大声で呼んでみた。だが返事は聞こえない。誰もいないようだ。
「困ったな。どうしよう・・・」
私もリュバンたちも途方に暮れていた。そこに村人が通りかかった。
「あんたたちは?」
「私はこの牧場の持ち主です。アメリア・デザートと言います」
「ああ、これはお嬢様で。失礼いたしました」
村人はあわてて頭を下げた。
「この牧場はどうなっているのですか? 人も家畜もいない・・・」
「へえ。ひと月までしょうか。なんでも公爵様がつかまったと。関係者は罰を受けるといううわさが流れて、みんな逃げ出しました。その時に巻き添えを食ってはかわいそうだということで牛や鶏などの家畜も放してしまったそうです。その後に牧草地が火事になり・・・」
村人はそう教えてくれた。私は茫然とするしかなかった。私に唯一残された財産がこんなになってしまったなんて・・・。
「お気の毒に・・・」
村人はそう言って立ち去って行った。私は廃墟と化した場所で呆然と立ち尽くしていた。
(神様。どうして私にこんな試練を・・・)
ララやリュバン、ソワレが心配して声をかけてくれた。
「お嬢様。何とかなりますよ」
「私たちがついております」
「俺も手伝いますから。元気を出してください」
私ははっとした。すべてを失ったわけじゃない。この人たちは私について来てくれる。
「ありがとう。私は負けない! きっとやり遂げる!」
私は決意を新たにした。
◇
牧場を立て直さねばならない。まずは住居だ。半分焼けた小屋は取り壊して新たに作りたい。だが資金も人手もない。ここはリュバンにすがるしかない。
「リュバン。お願い。またあの力で・・」
「お嬢様。あまりやりすぎると私が魔女だということがばれてしまいます」
魔女は異端者ということで火あぶり・・・という時代もあったが、今は魔女は伝説的な存在、絶滅したと思われている。もしリュバンが魔女だと知れ渡れば、王様や貴族が招く、いや捕まえに来るだろう。
「どうすれば・・・」
私は考えた。するとリュバンは耳打ちした。
「ここはお嬢様の力を使って・・・」
確かにそれなら可能だ。だがまたあの魔法剣士の姿にならなければならない。この際だ。チャオにも手伝ってもらおう。
代わりにリュバンは私が短剣を使えば、望むときにあの姿になるようにしてくれた。いちいち魔法を使うのが面倒になったようだ。ただし12時になったらリセットされるのは同じだ。その姿になればいろんなモードが使える剣が使えるし、チャオを天馬に変えることもできる。
まずは丸太小屋を建てることにした。設計図などはない。とにかくやってみるだけだ。ソワレやララが村人から大工道具を借りてきてくれた。それに釘などはなけなしの財産で町の市場から調達した。これで下準備はできた。あとは私だ。
あの短剣を頭上に掲げて叫ぶ。
「シンデレラ降臨!」
それであの魔法剣士の姿になった。そして腰に短剣を差す。変身した姿もだが、変身の掛け声はやはり恥ずかしい・・・。だがここは気にしてはいられない。
「天馬よ! 現れよ!」
またしても叫ぶ。するとチャオが天馬に変身する。これで準備OKだ。
まず近くの森に行く。私の剣にはいろんなモードが加えられているから木を切るなど朝飯前だ。どんどんと木を伐採して丸太にしていく。
それをそりに載せて天馬が運んでいく。時間短縮のためソリごと空を飛んで運ぶ。もちろんそのソリもリュバンの魔法がかかっている。それで十分な木材が集まった。
私はそれを使いやすく製材し、丸太小屋を組み立てていく。もちろんソワレとララも手伝ってくれる。だが2人は最初、私の格好を見て絶句していた。
「お嬢様。仮装パーティーでも行くのですか?」
「そんなに脚を出して・・・はしたない」
だから私は説明した。
「実はリュバンは魔法使いなの。魔法の力でこの姿にしてもらったからこの力が出せるの。でも絶対にこのことは秘密よ」
「わかっております」
「秘密は守ります」
2人はそう言ったが、念のため少し脅しておいた。
「絶対だからね。他の人に知られたらリュバンも私もただでは済まないから。それにあなたたちも・・・」
「えっ!」
「あまりにもむごいことだから想像しない方がいいわ。魔女は、いえ、その仲間も火あぶりの刑になるのよ」
「ひええ!」
これで秘密が簡単に漏れることはないだろう。念のためリュバンに2人に口外しない魔法でもかけてもらうか・・・。
とにかく数日かけて住居は出来上がった。本当のところは陰でリュバンが魔法でかなり手助けしてくれたのだが・・・。
次は牧場だ。まず壊れた柵を直して・・・これはソワレとララだけで十分だ。2人で協力して作業を進めて行ってくれる。
私の方は鶏小屋の再建だ。壊れた壁を直して網を張り直し、もらってきた藁を敷き詰めた。これもリュバンが魔法で手伝ってくれたが・・・。とにかくこれでガワができた。あとは中身だ。
牧草地は真っ黒に焼けたままだ。果樹の木もあったはずだが、すべて焼けて炭になっている。これを生き返らせねばならない。それは魔法でしか叶えられないだろう。ここはリュバンにお願いするしかない。彼女に相談すると、
「まあ。こうなったらとことんまでやりましょう」
そう言ってくれた。今のところ、村人たちは不審がっていない。いきなりいくつかの丸太小屋が建ったことについて・・・。だから急に草が生えても驚かないだろう。準備があるとリュバンが言うため、明日午後ということになった。
その日は雲一つない、よく晴れ渡っていた。午後の明るい陽射し中で牧場をよみがえらせるのだ。リュバンはあのとんがり帽子と黒い服を着てきた。魔女の正装をするからにはかなりの魔法を使うのだろう。
「さあ、最後の仕上げですよ!」
私たちは固唾を飲んで見守っていた。
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