第11話 処分
翼の生えた天馬に乗り、私は屋敷に急いだ。空を飛んでおり屋敷はもう目の前だ。2階の私の部屋の窓が開いているのが見える。あとはそこに飛び込むだけだ。懐中時計を取り出してみる。
「12時まではあと10秒、9、8、7・・・」
もう魔法が解ける。窓まであと少し・・・。
「3、2,1,0」
魔法が解けて私は元の姿に戻った。天馬も犬のチャオに変わった。
「ああ! 落ちる!」
だが私とチャオはそのまま窓に飛び込むことができた。ギリギリセーフだ。
「お嬢様。お帰りなさい。いかがでした?」
リュバンが聞いてきた。何とか屋敷までたどり着けてほっとしたが、父を救えなかった悔しさが湧きあがって来た。
「ダメだった。あともう少しのところで・・・」
「そうでしたか・・・」
「でも鉄の扉さえ打ち破れれば助け出せる」
私はまだ希望を捨てていなかった。もう一度行けば今度こそ助けられるという確信があった。
「ねえ、何とかならないの?」
「そうですねえ・・・。ではこうしましょう。この剣にいろんなモードをつけましょう。今は対人用にショックを与えるものですが、大きな破壊力を持つように」
「目くらましの煙玉の効果も。階段を上って行くのも大変だから吊り上げられてぶら下がれるように。それに・・・」
私はいろいろ注文をつけた。次は必ず成功させるために・・・。
◇
次の日、兵士を連れた役人がまた乗り込んで来た。
「執行官のフラッパーだ。取り調べを行う」
彼はプリモ伯爵の腹心らしい。昨夜、ゴラク塔が襲撃された件でデザート伯爵の身内あるいは関係者が犯人と疑われた。
一人一人、奥の部屋で取り調べを受けた。もちろん私もだ。部屋に入るなり、兵士たちに囲まれて尋問された。
「昨夜、この屋敷を出ただろう?」
「出ていません」
「嘘をつけ! よからぬことを考えているだろう? 反逆者の公爵を助け出そうと」
「知りません!」
私は否定し続けた。魔法の力でやったことだから、普通に考えると私が昨夜の襲撃を実行するのは無理があるだろう。
「あなたは父の公爵を助けようとは絶対に思わないことだ。命が惜しかったらな」
フラッパー執行官にそう脅されたもののすぐに放免された。
プリモ伯爵は恐れている。デザート公爵を助けようとする者を。そして我が家の者が疑われていた。それで建物内にも兵士が配置されて、私たちの行動も監視されることになった。これでは魔法の力でも屋敷を抜け出して父を救い行くことはできない。
そして継母のマーガレットや義兄のブルーメやレーヴはプリモ伯爵の屋敷に移ることになった。マーガレットは父と正式に離婚し、この人たちとは他人になった。いやこの人たちは向こう側の人間になったのだ。
「もうこりごりだわ! アミ。あなたとはもう他人だからね」
マーガレットはそう言い捨てて出て行った。それくらいの方がこちらもせいせいする。だが義兄だった2人は違った。
「こんなことになったが、今でもアミは俺の妹だ」
「きっとまた一緒に暮らせるようにする」
「ああ、そうだ。アミは俺のものだからな」
「いや、俺のものだ。それまでは寂しくても我慢するんだぞ」
まだシスコンをこじらせていた。私としてはうっとうしい元兄たちと離れられるのは幸いだ。
「心配しないで。私は一人で何とかするから」
とりあえずそう言っておいた。この元兄たちもプリモ伯爵側だ。油断ができない。
◇
小鳥のスピリットはそれからも情報を集めてくれた。父はゴラク塔から移されたようだ。だがその行方は分からない。警戒して秘密裏に目立たない場所で監禁しているのか、それとも・・・最悪の場合も想像できた。
しばらくしてデザート公爵家の処分が決まった。この公爵家はお取り潰しとなった。財産や屋敷、領地は没収。すべてプリモ伯爵預かりになった。私は王都追放になり、身分は平民に落とされた。私はすべてを失ったのだ。
いや、一つ私の手に残ったものがあった。それは王都に近いアリア地方にあるコロ牧場だ。それだけが私名義になっていた。死んだ母が私に残してくれたものだ。だからそこに移住することになった。身の回りの荷物だけで。
家令や執事、召使に庭師・・・多くの者が去っていった。彼らは涙ながらに訴えていた。名残惜しい、できたらまたお仕えしたいと・・・。だが今の私にはどうしてやることもできなかった。
その中でも残ってくれた者もいた。これから先のことも分からないのに・・・。
「私はお嬢様について行きます。ご心配ですから・・・」
そう言ってくれたのはリュバンだった。生みの母が亡くなってから乳母として世話をしてくれた。彼女がいれば一安心だ。それに魔法を使えるから・・・
「私は行くところはありません。どうか私をお嬢様のそばに・・・」
ララもそう言ってくれた。彼女の話す物語は面白い。それに仕事をコツコツやってくれる。牧場の仕事もやってくれるに違いない。
それにもう一人、コックのソワレがどうしてもついてくるという。
「俺の料理をわかってくれるのはお嬢様だけだ。ずっとついて行きます」
彼の作る料理は貴族には不評だ。だからどこかの貴族のコックに転職するというわけにはいかなかったのだろう。まあ、私専属に料理を作っていたのだから連れて行こう。牧場でも今までと同じ、私の好みに合った料理を作ってくれるはずだから・・・。
こうして私はコロ牧場に引っ越すことになった。だがその日にあの人たちが現れたのだ。
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