第10話 塔の最上階へ
赤い長剣を構えたジョーカーが次こそ仕留めようと狙っている。その迫力に私は圧倒されていた。だがジョーカーはなかなか打ち込んでこない。その代わりに口を開いた。
「名を聞いておこう。俺は紅剣の死神と呼ばれた男。リック・ジョーカーだ!」
名を聞いてくるということは私の腕を認めているということだ。剣士としての礼儀として答えなければならない・・・はずだ。だが本当のことは言えない。ここは偽名、いや何かこのヒロインにふさわしい名前をつけなければならない。
その時、頭をよぎった。魔法の設定が・・・。
「愛のために戦う一輪の花。魔法剣士シンデレラ!」
そう名乗ってしまい、私は仮面の下で赤面していた。だが相手は一瞬、ひるんだ。
「魔法剣士だと!」
わけのわからないものの方が恐ろしい・・・そんな感じかもしれない。それなら・・・私は調子に乗った。
「魔法の力と技であなたを倒します」
「何を! それならそのまやかしを打ち破ってくれる!」
まずい。逆に相手に火をつけてしまった。ジョーカーは剣を振り上げて間合いを詰めてきた。
(これ以上、打ち合えばやられてしまう。こっちは剣についてはずぶの素人なんだから。それに時間がない。ゆっくり相手をしていられないわ!)
私はお父様を助けに来たのだ。戦いに来たわけではない。
ジョーカーが踏み込んできて剣を振り下ろした。それに対して今度は剣で受けない。後方に宙返りをして避けた。するとジョーカーはさらに前に進んで右や左にと剣を払った。
(危ない!)
私はバック転を連続して打って剣を避けた。
「逃げているだけでは倒せないぞ!」
ジョーカーはそう声を上げる。だが私はまともに相手をする気はない。距離を取ったことだし、このまま後ろを向いて階段を上って行った。
「こら! 逃げるな! 待て!」
ジョーカーは自分の獲物を逃すまいと追ってくる。
(こんな時のためにリュバンにもっとアイテムをもらっておけばよかった・・・)
煙玉とか、敵を動けなくする砂だとか・・・ララが空想する物語には便利なアイテムがあった。何とかジョーカーを足止めできれば・・・
(そうだ!)
私は立ち止まって振り向いた。
「やっとやる気になったか!」
ジョーカーも立ち止まり剣を構えて少しずつ間合いを詰めてくる。私は剣を振り上げた。
(剣士にとって剣は大切なもの。こんな使い方はしないわね)
私は剣を投げつけた。剣はまっすぐジョーカーに向かって飛んでいく。その胸に突き刺さらんと・・・。
「カーン!」
私の投げた剣はジョーカーの剣ではじかれた。
「ふふふ。剣を投げるとは・・・。俺もなめられたものよ。そんなことで俺が倒せるか! 今度はこちらから行くぞ!」
ジョーカーは剣を振り上げて迫って来た、丸腰の私はそのまま立ち尽くしていた。
「死ね!」
剣を振り上げたジョーカー・・・だが彼はそのまま崩れるように倒れた。
「ふうっ! 助かった・・・」
私の剣は弾き飛ばされたが、その剣は私の思い通りに動く。それが背後からジョーカーを突いたのだ。剣が当たったショックで彼は気を失ったのだ。
だがまだ安心はできない。雑魚とはいえ、警備の兵が階段を上がってきている。私は最上階に向けてまた階段を上った。
そのうちにやっと最上階が見えてきた。
「もう少しよ!」
持ってきた懐中時計を見ると、もう時間がなくなっている。12時がタイムリミットだ。これを過ぎれば魔法がリセットして元の姿に戻ってしまう。
「お父様! お父様!」
私は叫んだ。すると最上階は一つの部屋になっており、入り口が頑丈な鉄の扉になっていた。
「その声はアミか!」
扉のむこうから声が聞こえる。父の声だ。
「そうです。アミです。お父様。助けに来ました!」
「アミ! すぐに逃げるんだ! 私のことはいいから」
「大丈夫です。この扉さえ壊せば。そこから離れてください!」
私は剣でその扉を打ち付けた。だが「カン!」と音がするだけでびくともしない。剣を振り上げて思いっきり打ったが結果は同じだった。
(この剣では鉄の扉を破壊することはできない)
対人用の剣だ。こんなものを破壊するようにはできていないのだ。それから何度も剣で試みたがどうにもならない。
「アミ。ありがとう。でも無理なようだ。もういいから逃げるんだ」
「お父様・・・」
「最後にお前の声を聞けて良かった・・・」
「お父様。必ず助け出します! 待っていてください!」
後ろ髪引かれる思いはあったが私は断念した。もう時間がない。階段を下りようとすると、追いかけてきた兵士が迫ってきている。私は指笛を吹いた。
(さあ、すぐにここを離れるわよ!)
私は階段からさっと飛び降りた。下まで吹き抜けになっているから私はその中を落ちて行く。このままいけば地面に激突してしまうが・・・
「ヒヒーン」
うまい具合に白馬が迎えに来た。それは駆け上がって空中を飛んでいる。私は空中で回転してその鞍に収まった。
「さあ、帰るわよ!」
手綱を引いて白馬を走らす。塔を出て塀を越えて夜の町をまた失踪する。懐中時計を見るとほとんど時間がない。
「飛んで!」
私は叫んだ。さっき白馬があんなに跳躍したから飛べるような気がしていたのだ。
「ヒヒーン!」
すると白馬は飛び上がった。そして驚くべきことに翼が現れて羽ばたきだした。この白馬はただの馬ではない。天馬だったのだ。
「すごい! 空を飛んでいる!」
これでかなりスピードアップしたが、時間はほとんど残っていない。屋敷まであと少しなのに・・・。
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