7
怜悟「あそこまで優希がヘコむのは見たことないな」
菜津「そだね。
身内以外の他人には淡白な面もあったからね」
倉葉「気づいてなかっただけで、私らと会う前からユキちゃんは居たはずだから当然よ」
詩恵歌「…これ、さっき舞って落ちてきた」
光「なにそれー?」
詩恵歌が拾ったのは2枚の紙。
1枚目にはこの別荘の間取り図が書いてあり、2枚目には…
光「これって…地下?」
1枚目に重なるように書かれた、地下空間と地下通路の間取り図だった。
倉葉「これ、この図の通りなら地下から古井戸を通って外に出られそうね」
優希「…地下だって...?」
部屋の入口でへたり込んでいた優希がようやく反応を示した。
優希「地下があるなら…そこにユキは連れて行かれたのか?
そこにユキは居るのか?」
倉葉「連れ去ったやつが何もして無ければね」
菜津「行く?優希」
優希「…ユキは俺のことを守ってくれてたんだろ?
なら今度は俺が助ける番だろ」
菜津「そっか。なら3人で行くか」
詩恵歌「…え?」
倉葉「そうね、怜悟と光と詩恵歌は先に出てて」
怜悟「なんでだよ?」
光「みんなでいく流れでしょー?」
倉葉「守れる自信ないからよ!私の力が足りないから!」
怜悟「…なら俺らは出ていかねーよ。
この部屋で待っててやる」
光「ボードゲームでもして待っとこっか」
詩恵歌「…今日は徹夜かな」
優希「お前ら…ちゃちゃっと片付けて帰ってきてやる」
倉葉「まったく…朝になったら出られるはずだからちゃんとにげなさいよ!」
菜津「えーっと地下へ床扉は…姿見の真下か。
よし、穴があったら入りたい!」
優希「入って出てくるな」
――――――――――
地下通路にて…
優希「暗いな…ライトない?」
菜津「こんな事もあろうかと、じゃじゃーん!懐中電灯2つ!」
倉葉「なんであるのよ。ていうかなんで人数分無いのよ」
菜津「本来は裏山を肝試しで行こうかと思ってて。
2個の理由は倉葉は両手空いてる方がいいかと思って」
倉葉「そう。なら優希が前、菜津が後ね」
優希「おっけ」
懐中電灯を付ける一行。
そこで目にしたのは…
倉葉「…白いわね」
菜津「上と同じなのかな?」
優希「先の通路が二手に分かれてるな」
倉葉「どちらかが古井戸から外に出る方ね」
菜津「間取り図からすると、左が広い空間に繋がってる方だね」
倉葉「そっちは白くないわね。注意して。
そこから先は霊が実体化しててもおかしくない場所だから」
菜津「一旦退路も確認しとく?」
倉葉「照らすだけならね」
菜津「…右の通路はずっと端まで白いみたいだね」
優希「なら左一択だな」
菜津「ユキちゃん救出作戦開始!」
優希「おう!」
倉葉「充分警戒して。歓迎されないと思うから」
優希「…今更だけど、敵は何なんだ?」
倉葉「…そうね。
推測だけど、霊ですらない何か、だと思う。
私、霊の気配もわかるし見えるんだけど、ユキちゃんをさらった黒いモヤには霊とは違う気配がした」
優希「なるほど分からん」
菜津「今の今まで霊の事知らなかったからねぇ」
優希「うるせー。
そういう菜津はどこまでわかってんだよ?」
菜津「ん?この世界の森羅万象全て」
優希「…は?」
倉葉「バカ言ってないで進むわよ」
――――――――――
少し進んで…
優希「広い空間に出たな」
倉葉「…なにか聴こえない?」
優希「なにそれ」
菜津「かすかになんか聴こえるね」
優希「なんかってなに?…あれは?」
広い空間の奥を懐中電灯で照らす優希。
そこに見えたのは…
優希「ユキ!」
思わず駆け寄ろうとするが、
倉葉「待ちなさい!」
それを、腕を掴み制する倉葉。
優希「なんだよ!」
倉葉「周りをよく見なさいよ!」
ユキと思われる、倒れた人の姿の周りには、
優希「…なん…だよこれ!?」
無数の黒い影。
大小様々な人の形や獣の形をした黒い影が周りに浮いていた。
菜津「…成れの果て...」
倉葉「…もしかして、これ全部霊だったモノ!?」
優希「…ユキ!動け!」
その声にピクリと動くユキ。
よくみると、指先から、爪先から、端から黒くなり始めていた。
優希「待ってろ!今行くからな!」
倉葉「あ、ちょっと!」
優希は倉葉を振り払い、ユキに駆け寄ろうとする。
すると、近くに浮いていた影の1つが優希の脚に貼り付く。
優希「な!?」
質量は無いはずの影が貼り付くと、そこが重くなったように感じ、よろけそうになる。
そして1つ、また1つと優希の体に張り付いていく影。
優希「くっそ!離れろ!」
手で払おうとするも、すり抜けて触れず、また1つ、また1つと、影が腕に、頭に、背中にといくつも張り付いていき、ついには膝を付き、立ち上がれなくなっていた。
そして似たように、ユキの姿にも、黒い影がいくつも貼り付いていく。
優希「ユ…キ!」
ほとんど全身が黒い影に貼り付かれながらも、這ってユキに近づく優希。
ユキに届くまで数m、数十cmと近づく。
優希「ユキ…!手を伸ばせ…!」
ユキも黒く染まった手をゆっくり伸ばす。
互いに手を伸ばし、あと数mmの所でユキの動きが止まる。
優希「…ユ…キ...!」
菜津「そおい」
優希「いだっ」
なんと、あろうことか菜津は優希を足の方から蹴飛ばした。
そして、
優希とユキの手が重なり合う。
その瞬間、ユキが薄く光を放ち、
ユキに貼り付いていた黒い影が弾け飛んだ。
菜津「間一髪かな?」
倉葉「…あんたよく蹴り飛ばしたわね」
そんなやり取りを尻目にユキはふわりと浮き上がり、
ビシッとVサインを頭上に掲げた。
菜津「…元気そうだね」
倉葉「霊なのに元気って意味わかんない」
優希「そんなことより俺の黒いの剥がしてくんない?」
――――――――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます