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浴室にて…


優希「それにしても、霊的力ってなんなんだよ...」


夕食前に倉葉から聞いた話についてひとりごちる。


優希「そんなのあるわけ…え?」


ふと、優希の視界の端に鏡が見えた。

見えたのだが…


――――――――――


ドタドタドタ…


優希「出た!!幽霊!!女の人の!!」


ダイニングに飛び込む優希。

そこに居たのは、倉葉と菜津だけだった。


倉葉「ん?あー、その子ね。

別に悪い子じゃないわよ。

てか、今気づいたんだ?」


菜津「後がつっかえるからはよ風呂入れ。

てか上裸でうろつくなし」


優希「え、えぇ...」


――――――――――


風呂場にて…


優希「………」


幽霊「………」


優希(き、気まずい)


優希には、鏡越しでなくとも、先程の幽霊がガッツリと見えてしまっていた。


優希(どうしよ…ん?)


湯船に浸かりながらどうするべきか考えていると、


曇った鏡に指で文字を書く幽霊。


幽霊(ユキ)


優希「ユキ…俺がどうかしたか?」


幽霊(チガウ ケド オナジ)


優希「ちがうって何が?」


幽霊(ユキ マモル)


優希「守る…俺を?」


ゆっくりと頷く幽霊。


優希「つまり、守護霊?」


激しく頷く幽霊。


優希「そっか…そっっっかぁ...。

ありがとな、守ってくれて。

何からかは知らんけど」


幽霊(コチラコソ)


優希「なにが?」


幽霊(マイニチ タノシイ)


優希「そっか、よかったな」


幽霊(ココ キケン)


優希「危険って…倉葉も言ってたな。

どう危ないんだ?」


幽霊(ココ レイ ジッタイカ)


優希「実体化…いまのお前みたいにか」


幽霊(ナノニ レイ ヨリツカナイ)


優希「霊が寄りつかない…何か原因があるのか?」


幽霊(ワカラナイ ハヤメニ ニゲテ)


優希「そっか。…風呂はいってる場合じゃなくね?」


激しく頷く幽霊。


優希「じゃああがるから…その…むこう向いてて?」


――――――――――


ダイニングにて…


優希「幽霊にガッツリ見られた...」


菜津「あー、減るもんじゃないしいいじゃん」


優希「精神は擦り減るよ...。

あと、ここ危険だから早めに逃げろって言われた」


倉葉「それは無理ね。

玄関も窓も開かなくなってるわよ」


優希「は?…それってヤバくね?」


倉葉「ヤバいわよ。

でも、出れない以上開くのを待つ以外無いじゃない」


菜津「霊力?は夜に強くなるのが定番だし、朝まで待つしか無いんじゃないかなって倉葉と話してた」


優希「まじかよ。どうすんだ?」


菜津「とりあえず風呂入るかな」


優希「こんな時に!?」


菜津「乙女に風呂入るなってある種の拷問だし。

だから守護霊貸して?」


優希「貸せるモノなのか...?」


菜津「まあ言ってみただけ。

じゃあササッと入ってくるねー」


優希「…はぁ」


倉葉「あ、守護霊が菜津について行ったわよ」


優希「まじかよ」


倉葉「それより、他に何か話さなかった?」


優希「ん?ここ、霊が実体化するらしいけど、霊が寄りつかない場所らしいね」


倉葉「そうなの!?霊が寄りつかない力場かぁ...。

何かが巣食ってるかもしれないわね」


優希「なにそれ」


倉葉「例えば…霊を喰らう何かとか」


優希「なにそれこわい」


倉葉「とりあえず情報整理したいわね。

この別荘で分かってることは?」


優希「あー?あんまり無いと思うぞ?

幽霊出る噂とか、去年リフォームしたらしいとかくらいか?

光は古かったからそれっぽい現象起きてたって言ってたな」


倉葉「ここの持ち主光なの?」


優希「いや、光のお爺さんの別荘らしい」


倉葉「そう…なら光にちょっと話聞いてくるわね」


優希「俺は部屋戻るか」


――――――――――

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