参考作品に『羊たちの沈黙』『鬼平犯科帳』、それに北方謙三の『水滸伝』。
ルブランを思い出す空気感、描写の中で、油合羽をトレードマークにした警官たちがしかし、“政争の国”と呼ばれた舞台の街を行く。
面々を仕切る大男、老ダンクルベールはパーカッション・リボルバーを携えた杖(喧嘩)術の達人で、人情を介し心理学者のごとき推察で捜査を進める切れ者。
その彼が肝入りで揃えた顔ぶれは、どの部署もそこだけで捜査チームドラマを立てられそうな個性ある実力派ばかり。
おまけに老が訪ねる終身牢獄の最奥では、美麗の一言では描ききれない魅力をたたえた不死怪物のファム・ファタール・レクターが執着と愛を囁いている……。
ここまでやって更に五話目、旧知にして刎頚の友たる局長が、部下どもの未来のため市民のため、自ら選んだ立場ゆえくだらない書類をさばきまくりながら、ダンクルベールたちの捜査責任をひっくるめて背負い始末書を準備させ始めたときはもう、栄養過多で一度ページを閉じました。
シーズンで分けられるドラマを見慣れている方も、北方・池波ほか錚々たる筆が作り出した世界がお好きな方も、きっと楽しめるはず。
……というか、押しも押されもしない名作のトーンに現代ドラマのスタイリッシュな風情までを合流させないでくださいよ!
ドン引くレベルで面白い悪魔合体の一作です。ぜひどうぞ。