第21話 忠告

健斗はしぶしぶ和夫に相談を持ち掛けた。最後まで話を聞いてから彼は言った。

「今のレディーの状態は相当まずい。俺の経験則では、彼女は3日以内に高所から飛び降りるってとこか。」

「何だって?一体どうすれば良いんだ?」

「旦那なんだろ、それくらい、自分で考えたまえ。」、彼は吐き捨てるように言った。健斗はそれからというもの、毎日のようにゆなを見守っていた。そして、遂にその時は来た。あの剣代橋から、彼女は今にも飛び降りようとしていた。慌てて彼女の腕を掴む。かつてない強さで、彼女は健斗の腕を振りほどこうとした。

その時、何者かが走ってくる音が聞こえた。

「ヘーイ、ハスバンド。多少強引にでも良いからそのレディーを押さえつけたまえ。」

一ノ瀬和夫が遠くから駆け寄ってくる。そして、暴れるゆなの口に無理やり薬を放り込んだ。5分もすると、彼女の動作は落ち着いた。

「間に合って良かったぜ。俺はこの病院に来てからずっと彼女の病気を研究してたんだ。そして、できたのがその薬ってわけだ。まだ開発段階だけどな。」

「開発段階??」、健斗とゆなが声を揃える。

「仕方ねーだろ。こいつを使わなきゃ今頃レディーはあの世行きだったぜ。」

こんな状況でもキザなセリフを吐く彼を見て、健斗とゆなは顔を見合わせて笑った。

「お似合いのカップルじゃねぇか。幸せに暮らしてくれよ。」

和夫は片手をあげてその場を去った。

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