ブルーハワイソーダ

ひじか ゆい

ブルーハワイソーダ

夏になるころ、私は彼女と友達になった。

共通の話題は映画だった。学校ではホラーやB級映画ばかり自分たちが今まで見てきたものを思い浮かべて書き綴っていたりしていた。彼女は他はあまりしゃべらない方で無口と言える。

彼女の席は窓際、髪は栗色で肩の長さくらいだった。風がそよぐと彼女の髪はさらさらとなびいて私にはくすぐったく思えた。

ある日学校で「はい。お礼。」と小さい袋に焼きドーナッツと書いてあるお菓子を渡してくれた、この間DVDを貸したお礼かなと思いありがたく受け取った。

受け取った私を見た彼女は口角を上げてふんわりとほほ笑んだ。教室の窓側の光を浴びたその唇はふっくらとして艶やかだったその唇に思わず近づきたくなった。

瞬間自分でもあれっと思ってその気持ちを残したまま「ありがとう」と私は普通に振舞った。

夏休みに彼女の家に遊びに行くこととなった。

昭和に流行った家庭用ゲーム機のリバイバルを二人で遊んだ。謎解きやサイコロを転がして進む人生ゲームみたいなものは二人にとって面白おかしいものばかりだ。

彼女のおすすめのホラー映画を観た「笑える。」と私が言うと彼女は笑った。

遊び疲れて休憩、ジュースやお菓子を食べたりいわゆる女子会だ。好きな男子や先生の話をしたり、クラスの女子の悪口を行ったり、しばらくして沈黙した。

彼女が「手、繋ぐ?」と言った。私はそれに慌てて「やだよ!」と何が悪かったか咄嗟に言った。その後なんだか恥ずかしくなって「私、帰るね。」と言って彼女の家をあとにした。

その後日、彼女は転校した。

お互い連絡も取り合わず私は大人になった。

あの微かな気持ちは彼女にあったのか確かめられずに。

私は一般的であろう普通の主婦になった。

今でも通りがかる女学生を見ると彼女を時々思い出す。

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