詩「化粧」
金子よしふみ
第1話
夏の海は化粧をしている
穏やかな波という面(つら)
そうか
水の皮と書いて波
波は皮だ、海の皮膚だ
僕らは海の表層を見ているだけだ
冬の海
その荒々しいじゃじゃ馬のような海原を
海鳥はカウボーイ気分で漂っている
うねる波はめくるなんてことをしなくとも
海の姿が見え透いて
僕らは単に怯えているというのに
秋も、そして春も
風が波にちょっかいをだすから
海の本性が分かりやすい
夏は風も避暑しているらしく
海の本性が僕らには分かりにくい
たとえば
「海の血液型はABO型と判明しました」なんてつぶやいたら
「何より面の皮の厚い人間が何をほざきやがる」と
恵比寿様やポセイドン様やネプチューン様から
クレームを受けるだろう
ただ浜から眺める夏の海は
やはりそれだけで少し涼しく感じられるのだ
美しいとも思うのだ
あるいはその本性を隠しているから
美しく見えるのかもしれない
詩「化粧」 金子よしふみ @fmy-knk_03_21
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