第6話 人生の岐路はどこかな

口座残高は、ある朝ぴたりと止まっていた。

増え続ける数字を見慣れた僕にとって、その静寂は異様だった。


──お金で買えるものと、買えないもの。

ふと、そんな言葉が頭をよぎる。


オフィスには、新人が三人。

田中は明るく、佐藤はまじめに、宮本は控えめに名刺を差し出す。

僕は何を教えればいいのか、まだ答えが出せない。


そんな折、僕は流行りのAIビジネスを思いついた。

でも、何から始めればいいか分からず、秘書の絵里香に相談すると──

「うちの変わり者、紹介しましょうか?」と笑いながら名刺を一枚手渡された。


翌夜、僕はエンジニアの吉田(仮名)を連れ、キャバクラへ。

「夢を叶えるには、時間と才能がいるんです」

吉田は酔いも忘れて、自らのビジョンを熱く語った。


そして翌朝――

僕のスマホに届いたのは、鮮やかなデモ動画。

深夜の会話が、そのまま動き出していた。


さらにその次の日、会社のWebサイトに新サービスがリリースされた。

数クリックで登録できる、AI自動応答システム。


僕は唖然としながら呟いた。

「できる人は、やっぱり早いんだね…」


止まった数字の意味も、新たな岐路の重みも、まだ見えないまま。

ただ、一歩だけ確かなのは──

僕たちは、もう後戻りできないということだった。

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