社畜の俺はベジータに憑依されて育メンに生まれ変わったけど、上司が育児放棄全開の悟空に憑依されてしまった!

小林勤務

第1話 憑依

俺(ベジータ憑依)「悪いなカカロット、明日は有休を申請するぞ」


上司(悟空憑依)「おい、ベジータ。おめえ、まだ仕事残ってるだろ」


俺「そんなものは後回しだ。明日はそんなことより大事な用があるんだ」


上「仕事より大事なことなんて何にもねえぞ。それより、おめえ明日の会議資料まとめたんか」


俺「ええいっ! それも家に帰ってやってやるから問題ないだろ」


上「おめえ何言ってんだ。会議資料を作ったら、オラがチェックしねえといけねえだろ。そのあと、プレゼンをどうやっかもチェックしねえといけねえぞ」


俺「会議資料のチェック、プレゼンのチェック、それが無駄だと言ってるんだ! だいたい俺は明日有休を申請すると言ってるだろうっ!」


上「おめえ役員をあんまり馬鹿にしねえほうがいいぞ。あの方たちの権力はものすげえかんな。指先ひとつであっという間に左遷されっぞ。おめえ、それでいいんか?」


俺「ああ。構わん。左遷なんて糞くらえだ」


上「それにしても、毎日12時まで働いてたおめえが、そこまで明日の有休にこだわるなんて珍しいな。なんかあんのか?」


俺「くっ……! 俺様が毎日深夜まで働いているのは、貴様がどうでもいいような社内調整資料をクレクレ言うからだろうが!」


上「そんなのあったりめーだろ。オラ、一応中間管理職ってやつだかんな。おめえの不始末はオラの責任になっちまうかんな。得意先より社内の方が大事だぞ」


俺「そうやって毎回毎回、自己保身に走りやがって……っ」


上「まあどうでもいいけどよ、そうこうしているうちに、あっという間に時間は過ぎちまうぞ。おめえが明日の有休にこだわる理由を教えてくんねえか」


俺「……生まれる」


上「生まれる? 何がだ? セルやブウみてえな強えーやつがか?」


俺「違う! 子供が生まれるんだ」


上「子どもお? 子どもって誰ん子だ……。って、まさかおめえの子かあ!?」


俺「ああ、そうだ。俺の子が生まれるんだ。明日は出産予定日だ」


上「おめえすげえな。その歳でよくブルマを抱けんな。オラ、垂れた乳なんて興味ねえぞ」


俺「き、貴様! 俺様の妻を……っ!」


上「まあいいけどよ、そんな大したことねえ理由なら有休なんて認めねえぞ」


俺「た、大したことないだとっ! 子供が生まれる日なんて特別以外何ものでもないだろうが!」


上「子どもなんて、別におめえが生むわけじゃねえだろ? ただ立ち会うだけじゃねえか」


俺「それだからお前は浅はかだと言うんだ。もし、出産に立ち会わなかったら、死ぬまで文句を言われるぞ。俺様はそんなのごめんだからな」


上「いいじゃねえかそんなの。オラ、悟飯や悟天の時に立ち会ったことねえぞ。なんなら、オラそのときは死んでっから界王様のとこで修行してたかんな。おかげで、えれえ強くなったぞ」


俺「お前ってやつは……」


上「まあ、そんなことで有休は認めえねから働いてもらっぞ」


俺「馬鹿なことを言うな! 有休は労働者の権利として保証されているはずだ。お前に拒否される筋合いはない!」


上「な~に言ってんだ。うちの会社に労働基準法なんてあるわけねえだろ。役員は神様みてえなもんだ。なんなら、おめえには有休日数も与えられてねえぞ」


俺「な、なにっ!」


上「いいかベジータ。どっちが大切か考えろ。おめえが生むわけじゃない子どもが生まれるときに立ち会う方がいいか、役員のプレゼンをまとめるのがいいか。どっちが大切かなんて明らかじゃねえか」


俺「ならん! 俺様は下らん仕事より出産の立ち合いを優先するぞ」


上「でもよ、おめえがいくら有休って言っても、上司のオラが承認しねえと休めねえからな。組織のルールってやつだ。オラが迷惑しちまうかんな」


俺「き、貴様、汚いぞっ!」


上「にひひひひひ。おめえも、もうちっとうまく立ち回れよ。大人なんて、み~んな我が身が可愛いかんな。てゆうかよ、こんなこと言い合ってるうちに、24時回っちまうぞ」


俺「はっ! い、いかん! すぐに帰らなければ」


上「おいおい逃がさねえぞ。おめえにはまだまだ資料があっからな。さあ、早くスーパーサイヤ人に変身して、資料を片付けちまえよ」


俺「く、くそおおおおおお!」


社長「おやおや、ベジータさんどうしましたか?」


俺「はっ! しゃ、社長」


社長「おーほっほっほ。私は社長ではないです。フリーザ様ですよ」


俺「な、なんだって!」


社長「おやおや、こんな時間に油を売ってる時間はあるんですか? 例の会議資料はまとまっているんですか? 時間はあっという間に過ぎてしまいますよ」


俺「まだに決まっているだろ。そんなことより明日は大事な用があるんだ」


社長「大事な用って、あなたの子供が生まれることですか?」


俺「ああそうだ。これは有休といって労働者に与えられた権利だ」


上「社長、こいつが言うこと聞かねえんだ。仕事より大事なことなんてねえって言ってるんだけど」


俺「うるさい、黙れ! 俺様はお前らがどうこう言おうと絶対に有休をとるからな!」


社長「ほっほっほ……ずいぶんムダな努力をするんですね……。そんなことがわたしに通用するわけがないでしょう!」


俺「それならどうするというんだ。左遷でも何でもしてみやがれ!」


社長「ほっほっほ……まさかこのわたしに闘いを挑もうとする愚か者がいたとは。まさに身の程知らずも甚だしいというやつですね……。左遷なんてしませんよ。ただ、あなたの査定を下げさせてもらいますよ」


俺「なっ!」


社長「これから子供が生まれるというのに、給料が下げられてはさぞ困るでしょう」


俺「お前ら……っ!」


上「そういうわけだ。ベジータ、有休なんて馬鹿なこと言ってねえで早くスーパーサイヤ人になって働け」


俺「うるさい! 俺様は死んでも貴様らの命令には従わんぞ!」


上「おめえそんな口聞いていいんか!? オラまで査定下げられちまうぞ。な、早くスーパーサイヤ人になれって」


俺「黙れ!」


上「オラおめえの巻き添えはごめんだかんな。ずっと管理職のままで経費も好きなように使いてえんだ」


社長「どうでもいいですが、上司のあなたも無駄な資料ばかり作って、売上が下がりっぱなしですよ」


上「いっ! こ、今度はオラの番かよ。売上が下がったのは、部下のせいでオラの責任じゃねえぞ。い、いや、責任じゃないです、はい」


社長「ほーう……」


上「ま、まさかオラを疑ってるんかあ? おい、ベジータからも何か言ってくれよ」


俺「はっはっは、貴様にも天罰が下る時がきたようだな。今まで得意先じゃなく社内だけを向いていた貴様の自業自得だ」


上「おいおい頼むよ社長、こいつはいいけどオラの査定は良くしてくれねえか。なっ? 頼むって。頭だけは無料だから下げっからよ。にひひひひひ」


社長「初めてですよ、ここまで私をコケにしたおバカさん達は……。ぜったいに許さんぞ、虫けらども! じわじわとなぶり殺しにしてくれるわ!」


上「く、くそおおおおお! こうなったらスーパーサイヤ人に変身して資料を片付けっぞ! 早くおめえも変身してフュージョンすっぞ!」


俺「うるさい! 俺様は明日から有休だ! 誰が貴様なんかと合体するか!」


上「まだ25時だから明日にはなってねえじゃなえか」


俺「黙れ! 今日は何時までが今日なんだ!」


上「そりゃあ、仕事が終わるまで今日が終わらねえに決まってっじゃねえか」


プルルルル(スマホ)――


俺「もしもし……なんだって! 破水しただとおおおお! ええい! カカロット早くしろ、今すぐフュージョンするぞ!」


上「やりい! そうこなくっちゃ! はああああああああ!!」





現在時刻:25時30分――










次回予告――【ベジータ過労死!? 果たして出産に間に合うのか!?】


 「おめえ、いくらなんでも資料作りのためにスーパーサイヤ人ゴッドに変身するのは寿命を削るだけだぞ」

 「カカロット! 貴様も全力を出せ!」

 「バカなこと言うなって、ホントに死んじまうぞ」







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