『僕』は市役所の職員から、近所で孤独死した老人が残した土をもらう。
土の入った紙袋の表面には、『地獄』と文字が刻まれていて……。
土を空き箱に開けてみると、鬼が人間を虐げている世界——『地獄』が出来上がった。
箱の中に出来上がった、ミニチュアの『地獄』。
『僕』は他の土やら何やら混ぜてみて、変化する『地獄』を楽しむ。
楽しんだ先で思う、ひとつの疑問。
その疑問の答え——この物語の結末に、あなたはきっと驚くことだろう。
カクヨムコン10、長編と短編のW受賞者である黒澤 主計(黒澤カヌレ)様。
カクヨムに登録してすぐの作品です。
この時からすでに、作者も作品も圧巻の存在感を放っています。
読んでみて、ぜひその魅力に引き込まれてくださいませ。
本作を拝読し、その発想の面白さに驚嘆するほかございませんでした!
地獄は先ず土作りから……なるほど、そこは全ての園芸に通ずるところですね!
しかし、箱に敷き詰めた土からみごと地獄が生じた後で、家のどの場所に置いておくべきか悩みどころです。
気持ちの良い日差しに入る窓辺……否、そこは地獄がもっとも似合わない場所。
では居間に置いて……飯が不味くなりそうですし、落ち着いてテレビも観られない。
では外に置いてしまうか……強風や野良猫にひっくり返されると思うと、気が気じゃありません!
私には、地獄のテラリウムは難しいかもしれません……。
しかし、そんなことはどこ吹く風の主人公、気にせずボンボンと地獄を作っていきます。
間違いなく奇人の部類に属しますが、その果てに待つオチは、詰め物がポンッと取れたような気持ちよさがありました!
無限の発想力を感じる物語、超オススメです!
タイトルに惹かれて読みました。
始まりは、農業を営む主人公が、孤独死した老人の遺した「土」を引き取ります。
孤独死、老人、土。
(ホラー小説なので良い意味で)不気味さがあり、「うわっ嫌な状況だな~」と思わせてくれます。
その土の上に、ミニチュアの地獄が出現します。
いわば地獄の箱庭です。
それを見た主人公は、なんと、地獄クラフトタイムに突入します。
古今東西の地獄が展開し、「なるほど~」と興味深いです。
既存のホラーの型にはまらないため、奇妙な読み味です。
先が読めないぞ、どうなるんだろうと思っていると、一言。
「まずはグレープジュースを入れてみよう」
ちょっと待って、「まず」ってなんだ、と心の中でツッコミました!笑
主人公けっこうトンデモないぞと笑っていると、実験はエスカレートしていきます。
不穏さを感じつつ、オチを想像しながら読みました。
しかし、予想もしない方向からの意外なオチでした!
そして、何ともいえない読後感。
奇抜な設定・発想・オチが、とてもおもしろかったです。
現在、黒澤様の短編を7作拝読しています。
全て読みやすく、おもしろかったです。
また、どの作品タイトルもキャッチーで惹かれています。
これからも楽しませていただこうと思っています!