第17話 未踏の煌めき
「作業スペースはここでいいのかな?」
そう言いながら、ヒューイの後からやって来たマーカスが、その部屋の隣にある作業ルームの机の上に、二人分の荷物を置いた。
「…で? 俺たちはなにをすればいいの?」
作業部屋に入って来たヒューイに、
「指示書はPCに来てるはずだよ」
と、マーカスが答えた。
そう言われ、ヒューイが机のPCの電源を入れると、やがてPCのトップ画面が立ち上がった。
が、それは、暗闇に睨みを効かせた、一対の目玉だけが、こっちを見ているだけのものだった。
「なに? これ?」
きょとんとした顔をしたヒューイだったが、ほかに表示が出ないので、とりあえずマウスを動かしてみた。
すると目玉はそのカーソルの動きを追いかけ始めた。
「わ……面白……」
一緒に見ていたマーカスが感心した。
すると目玉が消え、メッセージが現れた。
〈いつも見ているから〉
メッセージはすぐに消え、次は、中央、右、左に、それぞれ合計三対の目玉が現れた。
「増えた」
またマーカスが驚いた。
その目玉が中央に寄ってくると、目玉の輪郭が消え、瞳だけになっていった。
二人とも、次に何が起こるのかと見入っていると、その瞳はじわりと大きくなり、ゆっくり、人影へと変化していった。
「あれ?アーサー?」
ヒューイがそう言ったとき、
「ディック、ケント」
と、マーカスも言った。
画面に現れたその人影は、アーサーたち三人だった。
真ん中にいたアーサーが、
『おまえ、これで逃げられたと思うなよ』
と言うと、その画面の、彼らに重なるように、
次から次にメッセージが流れ出した。
「え?弾幕?」
マーカスがそう言うのと同じタイミングで、
弾幕コメントと共に、三人の声も聞こえて来た。
『これからどうするかが、お前らの腕の見せどころだからな』
そのディックの声に重なるように、
『必要なときには、いつでも話し聞くから』
と、ケントの声も聞こえた。
さらに彼らにかぶせて、画面せましとメッセージが流れだす。
〈ミス一発で消える玉じゃねぇだろう。はよ戻ってこい〉
〈マーカス。ヒューイの子守、よろしく〉
〈だいたいお前、やらかしすぎだよ。伝説でも作りたいのか〉
〈ここからどう巻き返すかだろう。期待はずすなよ〉
〈応援してるから、無理しないで〉
留まることなく流れるメッセージに
「なんだよこれ…? 好き勝手いいやがって……」
とあきれ顔のヒューイの横で、マーカスが
「あれ……これ録画じゃなくて、ライブ?」
と言いだした。ちらりと目を合わせた二人は、画面に向かって声をかけてみた。
「よぉディック」
「ハイ!ケント」
すると画面の向こうから、ケントが
『やぁマーカス』
と返事をした。
「ほらぁ、やっぱり」
マーカスがにこやかに笑った。
画面の向こうでは、焦ったディックがケントに注意をしていた。
『なにやってンだよ』
『ごめん…つい』
「じゃあ、いまのメッセージって……SIS分室のみんなからなのかな」
とマーカスが嬉しそうに言った。
ヒューイはあきれたように
「仕事しろよ、みんな」
と声をかけた。
するとメッセージは途絶え、三人だけの静かな画面へと変わった。
ヒューイは少し安心した顔で、
「アーサー、ディック、ケント。本当に迷惑かけたな。ごめん」
と謝ると、バツの悪そうな顔でアーサーが
『許すかバーカ。お前がどれだけの人を巻き込んだと思ってるんだ』
と言った。
続いてディックとケントも、
『謝りたきゃ、こっち(SIS)に来て謝れ』
『マーカスだけでもいいからね』
と続けて返事をくれた。それを聞いたマーカスが、
「悪いなみんな。俺、ヒューイと地獄まで堕ちるから。またね」
と、
----
(本文ここまで)
【あとがき】
・未踏の煌めき -みとうのきらめき-
問題は解決してなんぼです(持論)。
【予告】
・刹那の羅針盤 -せつなのらしんばん-
いよいよ最終話です。
最後まで心温かく見守って下さい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます