【西の森・入り口付近】






「うわっ、思ってたより……森、深っ!」


 王都から馬車で半日、俺たちは“西の森”と呼ばれる未開の森林地帯にたどり着いた。


 茂みの間を風が通るたび、どこか獣の気配が漂ってくる。いかにも何か出そうな空気だ。


「ここから先は、地図にも正確な道が記されていない。気を引き締めよ」


 アリエルが剣に手をかけながら、鋭い視線を森の奥へ向ける。


 一方、俺の隣にいるノエルはというと――


「うひゃあぁぁっ!? な、なんか今、木の陰で動いたっぽいの見えたかもかもかもかもッ!」


「落ち着けぇえええっ!! お前が一番うるさい!!」


 ビビりながら杖をぶんぶん振り回すノエル。マジで戦力になるのか不安しかない。


「ちなみにノエルって、魔法が使えないって話だけどさ……その杖って何か意味あるの?」


「はいっ! 飾りですっ!!」


「堂々と言うなッ!!!」


 そんなノリで始まった俺たちの初任務。だが、そう時間も経たないうちに、ちょっとした異変が起きた。


「……ん? この辺、空気が重い……?」


 アリエルが立ち止まり、地面に手を当てる。


「魔力の……異常な濃度? いや、これは“溢れている”感じか」


「えっ、魔力って溢れたりするの!?」


「通常は結界や精霊たちによって均衡が保たれているのだが……。これは自然の流れではないな。何者かが“魔力を集中させている”と見て間違いない」


「そ、それってつまり……」


 ノエルがビクつきながら小声で言う。


「この森のどこかに、魔力を使って“何か”をやってる奴がいるってことです……たぶん!」


「“たぶん”やめろって言ってるだろ!」


 俺が突っ込むと、アリエルがふっと笑った。


「ふむ……面白くなってきたな」


 そして俺の方を見て、ニヤリと笑いかける。


「どうやら、退屈しない旅になりそうだぞ、タクミ!」


「う、うん。俺、基本見守り要員だけどね!?」


 俺たちは深い森の中へと進んでいく。


 異常な魔力の気配。その先で、待ち受けているのは――


 \*\*“魔法陣の暴走”\*\*だった。


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