第2話

(あ、雄太だ。いつもの席で、いつもの仏頂面。まあ、いつものことか。でも、今日の国語の先生の話、本当に面白かったんだよね。あれ、雄太に話したら、少しは笑うかな?)


「あ、雄太!」


(わ、びっくりした顔!ぷぷ。可愛いなあ。私、雄太に話しかけたかったんだもん。)


「なんだよ、美咲。」


「なんだよ、じゃないでしょ。もう、そんなつまんなそうな顔してさ。あのね、聞いてよ!今日の国語の授業、先生がさ、めっちゃ面白いこと言ったんだよ!」


(聞いて聞いて!っていう気持ちでいっぱいになる。雄太には、私が面白いと思ったこと、全部話したいんだ。)


「…ふーん。」


(「ふーん」だって。あれー?つまんなそう?ううん、大丈夫!だって、本当に面白かったんだもん!話したら絶対伝わるはず!)


「ふーんって、興味なさそう!もー、聞いてる?それでね、先生がね…」


(雄太に話を聞いてほしくて、一生懸命説明しちゃう。ジェスチャーも大きくなるかな?これでどうだ!少しは興味持ってくれるかな?)


「…で?」


「で?じゃないよ!ちゃんと聞いてよ!もう、雄太ったら、全然人の話聞かないんだから。だから友達少ないんだよ?」


(あはは、友達少ない、なんて言われちゃった!でも、本当に素直じゃないんだもん。私がいるのにね!雄太の唯一の友達は、この私!)


「…うるさいな。」


(む。怒った?でも、怒った顔も、なんだかんだ言って真剣に話聞いてくれる顔も、全部好きなんだ。)


「えー、ひどい!せっかく面白い話してあげたのに!」


(もう!せっかく話してあげたのに!本当に、私の話、面白くないのかなあ?うーん、まあいっか!次!)


「別に、聞きたくなかったし。」


(またまたー。嘘だね?どうせ雄太のことだから、ただなんとなく「聞きたくない」って言ってるだけでしょ?もう!)


「もー!拗ねてるの?可愛いんだから!」


(可愛いって言っちゃった!まあ、本当のことだし。こういう時の雄太、ちょっとだけ子犬みたいなんだもん。放っておけない。)


「…からかうなよ。」


「からかってないよ!本当にそう思ってるんだもん。ほら、これ、あげる!」


(朝、早起きして作ったんだ。雄太の、この仏頂面を少しでもなくしたくて。これ食べたら、元気出るかな?)


「…いらない。」


(えー!?いらないの!?ショック!私が、雄太のために、って思って作ったのに!)


「えー、なんで?私が頑張って作ったのに!雄太に一番にあげようと思ってたんだよ?」


(これは本当!だって、一番最初に食べてほしいのは雄太だったんだもん。雄太は、私にとって一番大事な幼馴染だから。特別なんだ!)


「…嘘つき。」


(また、嘘つき、だって。なんでそうやってすぐに疑るんだろう?本当に、ひねくれてるんだから。)


「嘘なんかじゃないってば!ほら、あーん!」


(よし、あーん!ってしてあげよう!雄太、こういうの恥ずかしがるんだよね。ぷぷ。)


「…や、止めろよ!」


「えー、なんで?美味しいのに!一口だけでも!」


(もう、周りなんてどうでもいいや。今はこの仏頂面をなんとかしたい!雄太に、美味しいって言ってほしい。)


「…いいから、袋ごと寄こせ。」


「もー、仕方ないなー。はい!ちゃんと全部食べるんだよ!」


(よし、袋を受け取ってくれた!大事そうに持ってくれたな。少しだけ、顔が緩んだ気がした。やっぱり、雄太にはこれだな。)


(よし、ミッションコンプリート!ちょっとだけ時間かかっちゃったな。次、移動教室だ。)


(あ、なんかヒソヒソ声が聞こえる…私達のことかな?)


「ねえ、今の見た?」

「美咲さんと、あの雄太君?」

「えー、そうなの?なんか、すごいイチャイチャしてたよね!」

「甘酸っぱいねー!」


(あはは。イチャイチャ、だって。そんな風に見えるんだ。別にいいけど。)


(雄太、ちゃんと食べてくれたかな。また明日、元気な顔で会えるといいな。)


(それにしても、雄太って、たまに本当に可愛いんだから。)

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可愛すぎる幼馴染(ただし天然鈍感)に振り回される陰キャな俺 @flameflame

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