可愛すぎる幼馴染(ただし天然鈍感)に振り回される陰キャな俺

@flameflame

第1話

(まただ。昼休みだってのに、なんであいつはいつもあんなに楽しそうなんだ。周りには男子がいっぱい集まって、キラキラしてる。俺なんかとは大違いだ。)


「あ、雄太!」


(げ、呼ばれた。無視できるわけないよな、幼馴染だもんな。学校一の美少女様が、わざわざ俺なんかに声かけてくれんだから、光栄なこった。)


「…なんだよ、美咲。」


「なんだよ、じゃないでしょ。もう、そんなつまんなそうな顔してさ。あのね、聞いてよ!今日の国語の授業、先生がさ、めっちゃ面白いこと言ったんだよ!」


(先生が面白いこと言った?それがどうしたんだよ。俺に話して、何になるんだ?どうせ、いつもの美咲の「面白い話」だろ。俺はそんなに笑いの沸点低くないんだ。)


「…ふーん。」


「ふーんって、興味なさそう!もー、聞いてる?それでね、先生がね…」


(一生懸命説明してくる。その顔が眩しい。笑ってる顔、怒ってる顔、困ってる顔…どれもこれも、俺にとっては宝物みたいに大切で、だからこそ、他の奴らに向けてるのがたまらなく嫌なんだ。)


「…で?」


「で?じゃないよ!ちゃんと聞いてよ!もう、雄太ったら、全然人の話聞かないんだから。だから友達少ないんだよ?」


(友達少ないって、お前に言われたくない。お前は友達いっぱいいるからいいだろ。俺だって、お前がいてくれれば、それで…いや、ダメだ。そんなこと、言っちゃいけない。)


「…うるさいな。」


「えー、ひどい!せっかく面白い話してあげたのに!」


(面白い話?お前が勝手に面白いと思ってるだけだろ。俺はお前が他の奴らと笑ってる話なんて聞きたくないんだよ。なんでそんなことも分からないんだ。)


「別に、聞きたくなかったし。」

(言ってて、自分の情けなさに吐き気がする。)


「もー!拗ねてるの?可愛いんだから!」


(か、可愛いって!またそうやって、気軽に!お前、分かってないだろ。俺がその言葉にどれだけ期待して、どれだけ落ち込んでるか。)


「…からかうなよ。」

(声が震える。)


「からかってないよ!本当にそう思ってるんだもん。ほら、これ、あげる!」


(なんだ?小さな袋…お菓子?手作りか?なんで俺に?さっき、他の奴にも何か渡してた気がする。あれも手作りだったのか?結局、誰にでも優しいんだ。誰にでも、俺と同じように、気軽に接するんだ。)


「…いらない。」


「えー、なんで?私が頑張って作ったのに!雄太に一番にあげようと思ってたんだよ?」


(一番に?俺に?嘘だ。そんなわけない。お前が俺なんかを一番に思うわけない。どうせ、また何か企んでるか、本当に何も考えてないかのどっちかだ。)


「…嘘つき。」


「嘘なんかじゃないってば!ほら、あーん!」


(あ、あーん!?ちょ、待て!ここで!?周りに人がいっぱいいるのに!?何考えてるんだ、こいつは!?)


「…や、止めろよ!」


「えー、なんで?美味しいのに!一口だけでも!」


(俺がこの場で、お前が作ったお菓子を「あーん」で食べたら、周りがどう思うか。お前はそんなこと、これっぽっちも考えてないんだろうな。本当に天然で、本当に鈍感だ。)


「…いいから、袋ごと寄こせ。」

(顔が熱いのが分かる。)


「もー、仕方ないなー。はい!ちゃんと全部食べるんだよ!」


(そう言って、袋を俺に押し付けてきた。その笑顔が眩しい。まるで、俺が駄々をこねた子供にでも接してるみたいだ。)


(なんか、ヒソヒソ声が聞こえる…こっち見てるのか?何を話してるんだ?)


「ねえ、今の見た?」

「美咲さんと、あの雄太君?」

「えー、そうなの?なんか、すごいイチャイチャしてたよね!」

「甘酸っぱいねー!」


(イチャイチャ?どこがだよ。俺は一方的に振り回されて、心臓バクバクしてるだけだろ。傷ついてるんだよ。)


(このお菓子、どうしよう。捨てられるわけない。でも、食べたら、もっと好きになっちゃう。)


(お前は俺のことなんて、ただの幼馴染としか思ってないのに。)


(ああ、もう、どうしてくれんだよ、美咲。)

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