十三日目 魔王、菓子パンに堕ちる

なあサトウ……」


「……なんですか」


「この“メロンパン”ってのは……なんだ? これ、果実か? 武器か?」


「ただの菓子パンですよ。魔王様が気に入りそうだと思って、お土産に買ってきたんですよ。そこの袋に入ってるやつ全部、コンビニで買ってきたやつです」


「コンビニ……人間界の魔法ギルドの支部か?」


「違いますよ。飯と日用品と謎の雑誌が一緒に売ってる場所です」


「なんて便利な施設なんだ。人間界の文明、進みすぎてない?」


魔王ディオクレスは袋から慎重にメロンパンを取り出し、その丸くてふかふかした外見をしげしげと眺めた。

そして――


「では、いただこう……いざ、実食――!!」


(シャク)


「…………」


(もっもっもっ)


「……うまっ!? なにこれっ!? 外サクサクで中ふわふわ!? これが“メロン”の力か!?」


「それ、メロン入ってないですけどね」


「え?」


「見た目が似てるから“メロンパン”ってだけで、メロン要素ゼロだ」


「なんと……!? 人間界、名称詐欺まで美味いのか……!」


その後、魔王は菓子パンに完全にハマった。


「サトウーッ! この“あんぱん”ってやつ! 中から豆の甘いのが出てきた! 魔界豆と交換しよう!」


「いや、魔界豆は人間界で食えないですよ?! 下手すると毒扱いされますよ」


「ではこの“カレーパン”と交換だ! 見よ、この黄金色の揚げられた神々しさを!」


「魔王様、油まみれで興奮しないでください。あとその“カレーパン”一口目で口の中火傷しますからね」


「すでにした!! だが美味い!!」


最終的に――


「……サトウ、オレ決めたわ。人間界に、魔界コンビニの支部を出す」


「やめとけ?!」


「魔界産の素材でパンを焼いて、“メロンスライムパン”とか“火山あんぱん”とか売るんだ!」


「火山あんぱんは確実に訴えられるやつですよ。温度と圧力的な意味で」


「商品開発部に“人間界お菓子研究班”を設立する!」


「よくそんなくだらない情熱だけは湧きますね……」


そしてその日――


魔王の執務机の上には、**「週4勤務 → 週3勤務(パン研究のため)」**という恐るべきメモが貼られていたのだった


「あのクソ魔王どこいったああああああああ!!」


代行魔王ガチギレやん……

今度こそ絞られるな魔王様、南無


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