陽キャ優等生の生活をなぜか私が矯正します

ちくわ

第1話 生活記録アプリ01

「やばいって笑笑 それめちゃくちゃおもろいんだけど笑笑」

 教室の真ん中、教卓の前の方で5人ほどの男女のグループが固まって何かに大爆笑している。

 「…。うるさっ…」

 私、元木優香もときゆうかは教室の隅でその陽キャグループを遠目で見ていた。陰キャで存在感のない私には本当に関わりのない世界だった。

 【たのしそ…。いいよね、あの人たちはさ】

 私の通っている高校、櫻山高校は全国でも切れ者が集うと良く知られた学校であり、全生徒のうち半数は県外から入学試験を突破した猛者たちが揃っている。かく言う私も、入学試験を突破したのだけれど、過半数の人々とは違い、私は繰り上げ入学で入ってきた。そんなこの高校の中でも私のクラスの陽キャの方々はなぜか全員成績が良く、スポーツもできる、才能のある人たちが集まっている。その中でも特に、そのグループの中心にいる三部香澄みべかすみは休憩時間も休日も特に勉強している様子はないのにも関わらず、定期テストでは常に学年一桁、体育祭や球技大会では常に引っ張りだこ、しかもたまに部活の大会の助っ人として出ていたりもするらしい。

 【欠点がないって、いいな…。私なんて…】

 内気で陰気、スポーツもできず、社会性もなく、友人も全くいない。そんな私からしたら元木さんは憧れであり、妬みの的でもあった。

 「はぁ…。嫌だ嫌だ。早く家に帰ろっと」

 私は心の中のモヤモヤした気持ちを振り払ってささっと帰り支度をした。

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 「ただいま〜って、お姉ちゃんはまだ帰ってないか。」

 私は櫻山高校に合格したことで群馬県からこっちにやってきた。お姉ちゃんがこの近くの大学に通っていることで、姉と私の二人暮らしをすることになった。姉は基本的にバイトで帰りが遅いので、夕飯の支度は基本的に自分がしている。

 「今日はっと…。何作ろうかな〜」

 制服からジャージに着替えて今日買ってきた食材を台所の上に並べ、眺める。

 「この前の牛肉が残ってるから、この人参ともやしでプルコギ炒めして、安かった豆腐と小松菜でお味噌汁にしようかな」

 去年からこの生活を続けているからか料理にも慣れてきて、ちょっと前までできなかった洗い物との並行もできるようになった。

 「よっし。できた!うん。美味しい。」

 我ながら上手くできたプルコギ炒めとお味噌汁、炊き立てのお米を並べ写真を撮る。

 「いい感じに撮れた。んで、これをあげてっと」

 最近、私は何の変哲もない日常を変えようと自分の日常を記録できるアプリのライフスタイルレコード、通称ラフスタを使い、毎日の夕食の献立やお弁当の写真をアップしている。このラフスタでは自分の起床時間や就寝時間などを記録することもでき、健康維持のためにと大人から学生まで色々な人たちがやっている。

 ピコン♪

 夕飯を食べていると携帯がなった。この音はラフスタの写真(このアプリではレコードと呼ばれている)に誰かがいいねをした通知音だ。

 『ミストさんがあなたのレコードにいいねしました』

 「ミストさん…。いつも、いいねくれるけど…」

 ミストさんは私がラフスタを初めて一週間ほど経った頃にフォローリクエストを送ってきた人で、私の最初で今のところ最後のフォロワーだ。

 「…どんな人なんだろ?」

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