痛みと祈りが交差する、家族の告白劇

冒頭から胸に刺さる独白が、作品全体のトーンを決定づけます。自己否定と怒り、そしてかすかな祈りが交錯する語りは、読者の心の奥で長く反響します。家族という最も近い共同体の光と影を、きれいごとに逃げず真正面から見据える姿勢が徹底しており、「なぜ優しい人ばかりがいなくなるのか」というやり場のない問いが、静かな熱を帯びて反復されるのが印象的です。
第一章「愛と家族」では、言葉の刃が日常を細かく切り分け、関係のほつれを露わにします。続く「藍とマンソンジュ軍士官学校」では舞台が広がり、価値観の衝突や“生き延びる”ための選択がより立体的に描かれます。苛烈な場面がある一方で、詩のような比喩と会話の温度が、ときどき痛みをやわらげる——その緩急が読み続ける力になります。
連載は150話超・60万字規模の長編で、更新も精力的。重いテーマを扱いながらも、ただの暗さに沈まないのは、「美しくなろうともがく人」への確かな眼差しがあるからだと感じました。読後、痛みは消えないまま、それでも前へ踏み出すための言葉がひとつ手の中に残る——そんな読書体験でした!!!

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