第1章(3)
そして計画実行当日の朝、彼は満を持して家を出た。家を出て真っ直ぐ渋谷のスクランブル交差点へ向かい、服を脱ぎ狐の面を被った。そして、大声でカウントダウンを始めた。10,9,8,7,6,5,4,3,2,1,,,,0。
その瞬間、渋谷の大型ビジョンがジャックされ、狐の面を被った男の映像が流れた。男はこう言った。
『私は日本を変えるためにこの世に生まれてきた狐だ。今からこの腐った国を変えてやる』
その一言と同時に国会議事堂が爆発した。日本中がパニックに陥るのを待たず、次々と政治にまつわる建物が爆発していった。彼の計画は完璧だった。だが、ここから彼にとって予想外の展開が巻き起こった。まずは、逮捕だ。爆発騒ぎに紛れて逃げられると思っていたが、思いのほか警察の到着は早く、彼はスクランブル交差点の真ん中で裸のまま逮捕された。罪は公然わいせつ罪。刑務所に入ることはないだろうと思っていた彼だが、まさか、殺人の容疑までかけられたのだ。おかしい。彼の計画は完璧だった。どこにも証拠を残していないし、そもそもビジョンに映った狐の男が自分だという証拠はこの世のどこにも存在していなかった。彼は戸惑った。何がどうなっているのか理解できない。だが、そんな彼を待つことなく、気づけば裁判が始まっていた。罪は殺人罪など多数。彼は黙秘を一貫した。必ずここを出て日本を変える。その一心で黙秘を続けた。だが、もう彼が刑務所を出れる日は来ない。判決は死刑だった。彼の夢は敗れた。日本を変える、その一心で生きてきたこの2年間。大学を捨て、絵も描けなくなり、最終的には自分自身の人生も捨ててしまった。彼の人生は、もう終わってしまったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます